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いつか目の前で演奏を聴いてみたい、個人的に心待ちにしている演奏家たち

音楽を聴いていると、ときどき「いつかこの人を生で聴きてみたい…!!」と強く思わされる瞬間があります。

録音でも十分に感動しているはずなのに、それでもなお「目の前で鳴る音を浴びたい」と思ってしまう、そんな演奏家が何人もいます。

技巧が圧倒的だから、という理由だけではありません。音の一粒にまで気品が宿っているように感じられたり、演奏している姿そのものが音楽になっていたり、あるいはただ純粋に「好きだ」と思ってしまったり。

来日が難しい人もいれば、すでに一度聴いたけれど何度でも聴きたい人もいます。ひょっとすると、現地まで足を運ばなければ、生演奏を聴くことは叶わないかもしれない…。

そんな現実的なことも考えながら、それでも私は、いつか目の前でその音を聴ける日を心待ちにしています。

グリゴリー・ソコロフ

グリゴリー・ソコロフの演奏を初めて聴いたとき、「なんて高潔なのだろう」と思いました。

うまい、すごい、という言葉では足りません。音そのものに、迷いのなさのようなものが宿っていると感じます。

特にラモーやバッハを弾くときのソコロフは、本当に素晴らしいです。装飾音のひとつひとつが丁寧で、和声の響きがすっと耳に入ってきます。

彼の演奏に関しては、動画で手もとを見るのも好きです。指の動きはしなやかで、どこかリズミカルです。必要以上に大きく動かないのに、出てくる音は強く、美しく、粒がそろっています。

音圧までコントロールされているのが伝わってきて、「ああ、この人は本当に全部わかって弾いているのだな」と感じます。

クリスチャン・ツィメルマンと並んで語られる「生きる伝説」的存在ですが、ソコロフにはまた違う孤高さがあります。

ただ、もう30年近く来日していないと聞くと、正直なところ少し切なくなります。年齢を考えると、日本で聴ける可能性は高くないのかもしれません。もし本当に聴きたいのなら、こちらから会いに行くしかないのでしょう。

実際のホールの空気の中で、あの音を浴びたらどうなるのか。そう想像するたびに、やはり一度は生で聴いてみたいと強く思います。

クリスチャン・ツィメルマン

クリスチャン・ツィメルマンは、すでに一度生で聴いています。最高でした。それでもなお、何度でも聴きたいと思わせてくれる存在です。

「どの作曲家の、どのジャンルの、どの演奏も最高」と言ってしまうと、あまりに浅い感想に聞こえるかもしれません。でも正直なところ、本当にそう思ってしまうのです。

ショパンでも、ベートーヴェンでも、ブラームスでも、協奏曲でもソロでも、常に圧倒的です。

あの完成度はどこから来るのだろうと考えると、やはり基礎的な技術の強さに行き着きます。繊細な弱音から、オーケストラに埋もれない強靭な音まで、どんな音量でも破綻しません。

ひけらかすような派手さは感じさせないのに、たとえばリストのピアノ・ソナタを聴くと、そのメカニックの凄まじさに思わず息をのみます。超絶技巧を“超絶”と感じさせないまま弾き切ってしまうその余裕が、また格好良いのです。

確かなメカニックの上に表現が乗っているので、安心して身を委ねられる感じがあります。

生ける伝説と呼ばれるのも当然でしょう。それでも、私にとっては遠い存在というより、ただ純粋に「また聴きたい人」です。

マリア・ジョアン・ピリス

マリア・ジョアン・ピリスの演奏を聴くと、まず「音がきれいだな」と思います。(私の語彙力の低さに驚かないでください。)

派手さこそありませんが、ひとつひとつの音がやわらかく、無理がありません。

特に彼女の演奏するシューベルトが大好きです。旋律を大げさに歌わせるわけでもなく、感情を強く押し出すわけでもない、テンポの取り方やフレーズのつなぎ方もとても自然なのです。

譜面に忠実でありながら、どこか余裕があります。音と音の間がきれいで、決して急ぎません。だからこそ、シューベルトの持つ寂しさやあたたかさが、そのまま伝わってくるのだと思います。

圧倒されるというより、気づいたら引き込まれているタイプの演奏かもしれません。

マルタ・アルゲリッチ

クラシックが好きならご存知の方も多いかもしれません。こちらもまた生ける伝説です。

マルタ・アルゲリッチの演奏は、若い頃の録音と今の演奏を聴き比べるのもとても楽しいです。

若い頃のアルゲリッチは、とにかく勢いがあります。スピードも音量も迷いがなく、鍵盤を一気に駆け抜けていきます。音のエネルギーが前に前に出てきて、聴いている側も思わず身を乗り出してしまいます。

一方で、近年の演奏は少し質感が変わっています。若い頃のような爆発力一辺倒ではなく、音の重みや間の取り方に深さがあります。テンポもわずかに落ち着き、より自然になっているように感じます。勢いはそのままに、音楽の奥行きが増した印象です。

それでも、変わらないものがあります。

たとえば、Keyboard Sonata in D minor, K.141。(プレイリストにまとめてあるので聴いてみてください)若い頃の録音でも、近年の演奏でも、この曲を弾くアルゲリッチには独特の推進力があります。同音連打の部分、一体どうやって演奏しているのでしょう…。

年齢を重ねても、変わらない芯の強さ。そこが本当にすごいと思います。

…やたらと早口で喋っている感じが伝わってしまったかもしれません。大丈夫です。基本的に、聞かれるまでは答えませんので。

最後に、上述4名の中でも特にお気に入りの録音で締めくくりたいと思います。

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Ryota Kobayashi