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米国の現状から紐解くNEW ERAのステッカー剥がす・剥がさない論争

米国の現状から紐解くNEW ERAのステッカー剥がす・剥がさない論争

NEW ERA(ニューエラ)のキャップのほとんどのモデルで、ツバの表面もしくは裏面に貼られているシール(ステッカー)。

このステッカーはキャップの種類やサイズを表記したもので、ニューエラ愛用者の間でも「剥がす」、「剥がさない」の議論が度々繰り広げられています。

本来ならば、服やスニーカーに取り付けられたタグは着用前に取り除くのが当たり前です。

ところがニューエラの場合、街中でステッカーをそのままに着用している方を多く見かけます。

私も普段からニューエラを愛用しているのですが、キャップに馴染みのない方から稀に投げかけられるのが「なぜシールを貼ったままキャップを被っているのか」と言う疑問です。

この疑問に対して、ニューエラ愛用者からよく聞くのが「そういうもの」という答え。

その根本には新品や正規品、本物を被っていることの証明、盗品のアピールなど、ヒップホップ・ブラックカルチャーを含むストリートカルチャーを背景にした文化的な理由があります。

しかしながらこれらの背景は、あくまでも「米国」のカルチャーに根差したものです。

そのため「現地に住む人々からの伝聞による情報」という前提があります。

つまり、現地在住者と米国外に住む我々とでは差が生じても不思議ではありません。

現地のニューエラのキャップのステッカー事情は、一体どのようになっているのでしょうか。

本国のステッカー事情

ステッカーを剥がしたNEW ERA

ステッカーを剥がしたNEW ERA

少しリサーチすると、ニューエラのステッカーの「剥がす・剥がさない」をめぐる議論は、米国でも日本国内のように繰り広げられていることがわかります。

そして現地に住む人の実際の声に近しいキャップにまつわる記事や掲示板型ソーシャルメディア「Reddit」を見てみると、一際目立っていたのがステッカーを剥がす派の意見です。

剥がす派の意見としては、シンプルな見た目が好き、手入れがしやすい、日焼け防止などが多く見られました。

確かに、ステッカーを貼ったまま着用していると、ステッカーが貼られている場所以外が日に焼けてしまうため、後で剥がすと見栄えが悪くなってしまいます。

服のサイズタグやシールを貼りっぱなしにしているのと同じでおかしい、剥がさないのはダサい、大人なら剥がすべき、もう90s’ではない、2000年代前半は終わった、などの厳しい意見も見られました。

中でもとりわけシビアだったのが「ステッカーを貼りっぱなしにしている人を見るといつも首を横に振る」という意見。

ステッカーを貼ったままキャップを着用することのある私にとって、非常に胸に刺さる言葉でした。

そして興味深いのが、米国では剥がす派・剥がさない派に関係なく、ステッカーが貼ったままの状態では見栄えが悪いと考えているユーザーが大多数を占めるという事実。

日本では「ニューエラのステッカーを剥がすのはダサい」という意見が多く見られるため、かなり斬新な意見です。

ステッカーがそのままのNEW ERA

ステッカーがそのままのNEW ERA

一方、剥がさない派が見栄えが悪いと考えているにも関わらず、ステッカーを剥がさない理由としては、個性のアピールが大半を占めます。

また、コレクションとして保存するものはそのままにするというコレクター目線のものや、オリジナルのままの状態が良いというオリジナルに重点を置いたスタイルに根差したもの、昔は貼っていたなど流行の移り変わりを感じさせる理由も見られました。

このように近年では、本国のほとんどのニューエラ愛用者がステッカーを剥がして着用していることがわかります。

実際に、ステッカーをそのままにしたスタイルを広めるのに大きく貢献したラッパーも、近年ではステッカーを剥がしたキャップを被っている姿を目にする機会が多くなりました。

剥がす派・剥がさない派、正解はどちらか

NEW ERAのツバのステッカー

現在、米国内ではステッカーを剥がすユーザーが多いという事実を踏まえ「剥がす・剥がさない」の正解について私なりに考えてみました。

現地の一般の意見はというと「剥がしても剥がさなくてもどちらでも良い」という意見がありつつも、剥がすべきと結論付けられている状況です。

一方、日本国内では剥がさないで被っている方が多く「剥がすのはダサい」との意見が見受けられ、ガラパゴス化が進んでいる状況。

ちなみに、米NEW ERA公式は「私たちはあなたが何をしても構いません。正しい方法も間違った方法もない。」と、表明しています。

前提として服装は、自分の好きなものやルーツとなったカルチャー、所属する文化圏などを視覚的に表現するものだと私は考えています。

中には主義や主張を表現する方も見られます。

そんなファッションにおいて、他者の意見を取り入れるのは良いものの、誰かに強制するようなことがあってはいけません。

90s’〜00s’にかけての音楽が好きなのであればステッカーをそのままに着用する、日焼け痕を残さないためにツバの裏に貼り替える、シンプルにしたいからステッカーを剥がすなど、多様な考えやキャップの被り方があって良いと考えています。

そもそもキャップのステッカーの有無は、文化的な背景はあれど議論になるほど深く考えなければいけない内容ではないのかもしれません。

ましてやその文化を発信した本国の現状を鑑みず、カルチャーを盾に剥がす派を批判するのは浅はかです。

私はというと、剥がすものもあれば剥がさないものもあり個体によってまちまちです。中には2つ同じモデルを購入し、片方はステッカーを剥がしてもう一方は貼りっぱなしにしている場合もあります。

他者のファッションやその背景にある主義・主張を批判して消去法的にスタイルを確立するのではなく、ポジティブな理由から文化が伝播するようになれば良いなと感じました。

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Takahiro Ichikawa