私は昔からモノクロの写真を撮るのが好きです。
色のない世界には、余計な情報がそぎ落とされたぶんだけ、光と影、輪郭、そして空気の質感が立ち上がってくるように感じます。
今回は、そんなモノクロで撮った写真をいくつか並べてみました。特別な説明も演出もありません。ただ、並んでいるだけの写真たちです。
家の猫
横浜の片隅
フォーク
渋谷
モノクロ写真を眺めていると、なぜだか逆に、そこに物語を感じてしまうことがあります。
色がないぶん、余白が生まれて、見る人の想像が入り込む余地が広がるのかもしれません。
モノクロの世界は、過去でも未来でもなくどこにもない場所のように思えます。でもそこには、確かに「物語の気配」が潜んでいる気がするのです。
ということでもうちょっとだけお付き合いください。
揺れ
葉っぱ
水のようなもの
海
光
空
電車
なんだか、モノクロの写真を見ているとふいに郷愁に駆られるようなときがあります。
それが自分の記憶とまったく無関係な風景であっても、なぜか懐かしいような、胸の奥が少しだけ締めつけられるような、そんな感覚になるのです。
色のない世界は、現実の時間から少し切り離されているようで、まるで遠い昔に置いてきた何かを思い出させるメディアのようです。
それは過去の記憶そのものではなく、「かつて何かを大切に思っていた」というかすかな感情の輪郭かもしれません。
写真が語るのではなく、見る側の心の奥にある静かな声を、そっと引き出してくるのがモノクロという表現なのかもしれません。