革靴と比べて軽く、履き心地が良いのがスニーカーの大きな利点ですが、一口にスニーカーと言ってもさまざまな種類があり、それぞれ違った良さがあります。
私はスニーカーが好きで、これまで色々なスニーカーを試してきました。スニーカーを選ぶ際には、見た目や使われている技術ももちろん大事なのですが、履き心地の良さも重要視しています。
履き心地が良いスニーカーと聞くと、真っ先にハイテクスニーカーが頭に浮かびますが、実際に履いてみると必ずしもそうとは限りません。
普段の街履きのような場合には、最新の技術を使ったものよりも、技術的に少し古いスニーカーの方がむしろ履き心地が良かったりもします。
5〜6年前くらいまでは、技術的に新しいスニーカーを優先して試していたのですが、最近は実際の履き心地の良さや使い勝手を考慮してスニーカーを選ぶことが増えました。
今回は、履き心地の良いスニーカーについて考えてみます。
ランニングシューズに見るスニーカーの目的に対するアプローチ
私たちが普段、何気なく履いているスニーカーは、用途と目的を持ってデザインされています。
現在は競技などで使われていないスニーカーもかつては目的を持っていて、それに合わせてデザインされているモデルがほとんどです。むしろ目的を持たずに設計されたスニーカーを探す方が難しいかもしれません。
そんなスニーカーのカテゴリ分けは、ランニング、バスケット、フットボールのように大きく競技で分類され、そこからさらに細分化されるイメージです。
技術的には古いものの、人気の高いモデルや、普段履きを想定して造られたモデルに関しては、ライフスタイルのカテゴリに分類されていたりします。
ランニングのようなジャンルでは、長距離・短距離などで分かれ、さらにシリアスランナー向け・ファンラン向け、練習・本番というように枝分かれし、それに合わせてスニーカーも細かく分類されます。
加えて、同じ用途や目的で造られたモデルでも、どんなアプローチを取っているかによって、その履き心地は大きく異なります。
そもそも最近までスニーカーのソールは、基本的にはクッション性と反発性を両立できないとされていました。その関係の例としてわかりやすいのが、近年のランニングシューズの流行です。
タイムを縮めるために速く走るランナー、つまりシリアスランナーがレースで履くことを想定したモデルは、少し前までは薄底のランニングシューズが主流でした。
薄底のランニングシューズは、反発性や路面との接地感、足の動きに合わせてフィットしやすいなどの長所を持ちます。その一方で、アスファルトなどの硬い路面では足を痛めるリスクがありました。
怪我のリスクがあるにも関わらず薄底が主流だったのは、厚底のランニングシューズでは反発性や、走行時の安定性の確保が難しかったことが大きな理由です。
これまでクッション性と反発性の両立を実現させるために、ウレタンやEVAなどの素材に関する工夫や、adidasのboostフォームのように素材の加工によって試行錯誤されてきましたが、根本的な解決には至りませんでした。
ところが、近年ではNIKEのアルファフライシリーズのようにクッション性の高い厚みのあるソールにカーボンプレートを内蔵し、クッション性と反発性と両立させたモデルが登場。着用したランナーが次々と結果を残したことで、ランニングシューズに対するアプローチは大幅に変わりました。
このように、スニーカーへのアプローチは、時代とともに変化してきました。
しかしながら、これは競技での着用という目的を前提とした履き心地の話です。普段の街履きという視点から見ると、注目すべきポイントは異なります。
競技用のモデルは街履きには適さない場合が多い
競技用のスニーカーの中でも本格的なモデルの場合、普段の街履きには適さないことがほとんどです。
前出した、近年のシリアスランナー向けのモデルの場合は、速く走るために設計されています。
そのため、ソールがキツめのロッカー構造になっていたり、オフセット(踵からつま先までの傾斜)が急だったりと、走る分には良いものの、歩くことに関してはあまり考慮されていません。
他にも、機能を維持できる耐久距離が短く、金額的にも高額です。
あくまでも、速く走るという目的のために作られています。
一方で、カジュアルなランニング向けのモデルは、クッション性を確保しつつ怪我の予防を目的に接地面積を広く設けていたり、オフセットも控えめなモデルもあります。
普段の街履きの場合は大抵、このようなモデルの方が快適に過ごせる印象です。
そして、技術的に確立していなかった時代にリリースされたランニングシューズの場合も、現在ではソールの素材が変更されていたり、ラスト(靴型)に余裕を持たせていたりと、普段の履き心地を考慮して変更が加えられたモデルも存在します。
古いモデルでも比較的新しいモデルよりも履き心地が良く感じることがあるのは、このような細かな変更が影響していることも多いです。
意外にも知られていないですが、一見すると履き心地が良さそうに見えるNIKEのAIR技術には、履き心地が良い根拠はありません。実際には履いている人に合っているかどうか、という感覚的なところが大きく、他のスニーカーと同じく、人によってモデルごとに履き心地の良し悪しが異なります。
前提として、競技使用のように明確な目的を持って着用するわけではないため、一概にこんな履き心地のスニーカーが良いとは言えませんが、特定の競技に特化したモデルの場合は、普段履きするとあまり快適に過ごせない印象です。
普段の街履きにおいて履き心地の良いスニーカーとはなにか
どのくらい歩くかにもよりますが、個人的には普段履きで履き心地に大きく影響するのは、アッパー(ソールを除いた靴の上の部分)だと考えています。
フィット感や重さはもちろん、ソールとのバランスも重要です。
好みの問題になのですが、個人的には普段履きに適しているのは、適度に重さのあるアッパーとソールのバランスが取れたスニーカーだと考えています。
ニット素材のアッパーのハイテクスニーカーに多いのですが、アッパーだけが軽くてソールが重たいモデルだと、バランスがとりにくく、慣れていないと足の普段疲れないようなところが疲れている感じがします。
フィット感に関しては、あまり歩かない日には長時間履いていても足が痛くなりにくいゆったりとしたアッパーを、反対に散歩のように長距離を歩く場合にはややフィット感のあるアッパーのスニーカーを選ぶなど、一日の過ごし方で履くスニーカーを決めています。
実際に履いてみるとわかるのですが、足がむくみやすい座りっぱなしの場合などは特に、ゆったり目のスニーカーだと楽です。
個人的にはソールももちろん影響すると思うのですが、10km以上歩かない場合にはローテクでも問題ないような印象です。
散歩のように長距離を歩く場合には、以前爪が剥がれた経験があるので、ローテクスニーカーは選ばないようにしています。
ソールのクッション性に関しては、アスファルトの上を遅いペースで歩くような場合には、ある程度固さのあるモデルの方が疲れにくく感じます。
このように、履き心地はさまざまな要素が影響するため、履き心地の良いスニーカーは、場面によって異なります。
場面を問わずに履き心地が良いとなると、ソールとアッパーの両方が自分に合ってい流必要があるため、そんなスニーカーに出会う機会は希少です。これまでかなりの種類のスニーカーを履いてきた私も、今までまだ3足しか出会えていません。
シーンによって適切なスニーカーを数足用意しておくのが現実的なのかなと思います。