弊社は、横浜を拠点とする制作・編集の会社です。
これまで「編集」という仕事に向き合ってきましたが、時代の変化とともに、その役割自体が少しずつ変わり始めているように感じています。
そうした感覚は、日々の実務の中で徐々に表れるようになりました。
記事コンテンツを例に挙げると、文章や構成に大きな問題がないにもかかわらず、届けたいはずのユーザーに情報が十分に届いていないと感じる場面が増えてきたんです。
もちろん、編集スキルの未熟さが原因の場面もあります。ただ、それだけではない、どこか手応えの薄さを覚えることが多くなってきました。
こうした経験を重ねる中で、「編集という行為だけでは、その役割を十分に果たしきれなくなってきているのではないか」と考えるようになりました。
では、何が必要なのか。その問いに向き合う中で、ひとつの視点として辿り着いたのが「編成」という考え方でした。
編集という仕事が担ってきた役割
編集とは、基本的に「ひとつの対象」に向き合う仕事です。
ひとつの記事、ひとつのテーマ、ひとつの文章。その中身を掘り下げ、構造を整え、伝わる形に仕上げていく行為そのものが、編集という役割だと考えています。
SEOにおける記事コンテンツ制作の文脈でも、この編集という仕事は欠かせません。情報を整理し、意図を明確にし、読み手にとって理解しやすい形に整えることは、コンテンツの価値を高めるうえで今も必要不可欠な工程です。
ただ、現代においては完成度を高めたからといって、必ずしも届けるべき相手に届くとは限らなくなってきました。
その理由はとてもシンプルで、情報があまりにも多くなったからです。
SNSの普及によって、誰もが手軽に情報を発信できるようになりました。さらに生成AIの登場により、誰もが編集でき、誰もが「それらしい文章」を生み出せる時代になっています。この流れは、今後さらに加速していくはずです。
こうした状況にあっても、編集という行為そのものが無効になったわけではありません。むしろ、その価値は今も変わらず存在しており、これからも欠かせない役割であると考えています。
一方で、問題は情報の質そのものではなく、「どのように届けるか」という設計の部分に移りつつあります。
現代では、情報があふれ、他の情報と並べられながら消費される環境が当たり前になりました。読者は、ひとつの記事だけを読むのではなく、複数の記事を行き来し検索結果を比較します。また、SNSや音声メディアなどといったチャネルを横断しながら、自分なりの理解を組み立てていきます。
そうした環境の中では、「磨き込まれているコンテンツ」であること以上に、どの文脈で、どんな順番で、どの情報と並んで提示されるのかが、コンテンツの意味を大きく左右するようになってきていると感じています。
テレビの編成から考える、これからのSEO
これからの時代に求められる視点として「編成」を挙げましたが、その発想のきっかけはテレビでした。
自分は、いわゆるテレビっ子として育ちました。帰宅すると、まずテレビをつける習慣は子どもの頃から自然な行動で、今でもほとんど無意識に続いています。
こうした原体験もあってか、これからのSEOやコンテンツのあり方について考えていたとき、テレビとの間に強いアナロジーを感じるようになりました。
そこで、テレビ業界について少し調べてみることにしました。
編成とは、主にテレビ業界で使われてきた言葉で、放送における番組表を組み立てる役割を指します。単に番組を並べる作業ではなく、どの時間帯に、どの番組を配置し、どのような流れで視聴者に届けるのかを設計する仕事です。
テレビの編成担当者は、個々の番組の面白さだけを見ているわけではありません。「前後の番組との関係性はどうか」「視聴者はどんな流れで番組に触れるのか」「接点が途切れない構成になっているか」といった、全体の設計を担っています。
単発で視聴率の高い番組をつくること以上に、視聴者との接点をいかに連続させるかが、編成の重要な役割だと言えます。
編集が、ひとつのコンテンツに向き合い、その意味や完成度を高めていく仕事だとすれば、編成は、複数のコンテンツや情報をどのように配置し、どの順番で、どんな関係性の中で届けるのかを設計する仕事です。
ひとつひとつの情報の完成度だけを見るのではなく、「どの情報が入口になるのか」「どこで理解が深まり」「どこで次の行動につながるのか」。そうした全体の流れや文脈まで含めて考える視点が、編成には求められます。
Webにおけるサービスの一部を「テレビ局の機能」に置き換えて考えてみました。
| テレビ局の機能 | Webサービス |
|---|---|
| 放送局 | Webサイト |
| 番組 | 記事・LP・動画などの個別コンテンツ |
| 視聴者 | 検索ユーザー・生成AI |
| 視聴率 | 検索流入・AI引用率・CV |
| CM/番宣 | Web広告/SNS・YouTube・Podcastなど |
| 視聴率分析 | アクセス解析・クエリ分析など |
まず、放送局にあたるのが「Webサイト」という箱そのものです。
局自体が強くならなければ、番組も十分に届きません。SEOにおいても、サイト全体の信頼性や文脈の強さが前提になります。
番組は、記事や動画といったコンテンツです。
放送局(Webサイト)で何をテーマとして扱うのか、どんな強みを打ち出すのかが重要になります。「報道が強い局」「バラエティに強い局」があるように、Webサイトでも「〇〇といえばこのサイトだよね」という認知を、少しずつ積み上げていく必要があります。
CMや番宣は、主にWeb広告にあたります。
新しい番組を知ってもらうために番宣があるように、Webにおいても広告は、ユーザーとの接点を意図的につくり出すための入口として機能します。
また、SNSやYouTube、ポッドキャストといった外部プラットフォームは、CMと同様に、本体では拾いきれない層との接点を補完する役割を担います。
視聴率分析にあたるのが、Webにおけるアクセス解析です。
どこで離脱し、どこで関心が高まり、どんな行動につながったのかを把握することで、ユーザーがどのような流れでコンテンツに触れているのかが見えてきます。Webにおいても、「ユーザーの生活や行動の流れの中で、どの場面で思い出され、参照されるのか」を意識した設計が求められます。
編集を活かすための編成という発想
テレビ業界でもWeb業界でも、編成とは、決まった手順をなぞれば成立するものではありません。
その時代、そのメディア環境、読者が置かれている文脈に、どれだけ真剣に向き合えるか。その姿勢そのものが、編成という仕事の本質なのだと感じています。
誤解してほしくないのは、ここまで綴ってきた内容が、編集を否定する話ではないという点です。
編集は、今も、そしてこれからも欠かせない仕事です。むしろ、編集の質が低ければ、編成は成り立ちません。ひとつひとつの情報がきちんと磨かれていなければ、意味の配置や関係性を考える以前の問題だからです。
ただ、情報があふれ、生成AIが登場したこの時代において、編集「だけ」では足りなくなってきました。言い換えれば編集に加えて、求められる視点が増えたということなのだと思います。
編集と編成は、対立する概念ではありません。役割は異なりますが、向いている方向は同じであり、互いに補い合いながら、はじめて機能するものです。
これまでも、戦略設計の視点をまったく持ってこなかったわけではありません。こんな時代だからこそ、編集に加えて、編成=戦略設計という視点が、より強く求められるようになってきているのだと思います。
こうした視点を手がかりに、「編集」と「編成」というふたつの役割を、もう少し具体的な現場の話とともに掘り下げていければと考えています。