9月になりましたね。
会社を立ち上げてからあっという間に3年という時間が経ち、4期目に突入しました。
この3期目、信じてくださったお客様、突然の相談にも関わらず力を貸してくれた方々、そして最前線で目まぐるしい日々を共にした社員たちに、まずは心からの感謝を伝えたいと思います。
本当にありがとうございました。
さて、3期目には期待を超える嬉しい出来事もあれば、思うようにいかない苦く苦しい経験もありました(そっちの方が多いような気もします)。
それでもなんとか歩みを止めず、ひとつひとつの選択を積み重ねて、今日という日を迎えることができました。
ということで今回は3期目を振り返ってみようと思います。
といっても「具体的にサービスをこうしていく」といった話ではなく、会社として、また私たち自身として「どう在りたいのか」「何を大切にするのか」といったマインドの部分を中心に、あらためて振り返り、言葉にしてみようと思います。
3期目の反省、そして4期目をどう歩んでいくか。その過程で見えてきたことを、少しだけ綴っていきます。
4期目、どこに向かうか
振り返れば、創業からの1〜3期目は、恥ずかしながら「生き抜くこと」に必死だったようにも思います。
入金や支払いを気にしながら、手探りで何とか事業をまわし、ただ必死に前に進むことだけを考えてきました。
しかし、そんな話を誰もが知る大企業の経営者の方や、100年企業の経営者の方にさせていただいた際、「今でも毎日必死だよ」と皆様おっしゃっていたんです。それを聞いて、少し安心したと同時に、気が引き締まる思いがしました。
精一杯でいることは恥ではない。これは間違いありません。しかし、精一杯なだけで止まっているわけにはいかないのです。
だからこそ、4期目の私たちは少しずつでも「基盤を整える」ことに目を向けたいと思っています。これはもちろん前に進むためです。
お金を稼ぐことそのものが目的ではないというのは私たちの根底にある価値観です。だからこそ、むやみに売上を追いかけることはしません。
しかし、持続的に社会に対して価値を提供するには、ある程度の「経済的な安定」が不可欠です。
現在の私たちは爆発的な成長を求めるフェーズにはいません。だからこそ常に一定の売上を生み出せる「構造」や「仕組み」を整理し、外の世界とよりよく接続していくための「言葉」や「かたち」により深く思いを馳せたいと思っています。
4期目は、その足場を築く一年にしたいと考えています。
3期目の大きな反省点
未来の話ばかりしていても、足元がふらついていては前には進めません。
まずは、3期目の反省から。
細かく挙げればキリがないのですが、最も大きな反省点を一つだけ挙げるとすれば、それは「数字と、数字に対する行動意識の甘さ」だと思っています。
1期目、2期目は、私自身が事業の収支やKPI、キャッシュフローを日々細かく追い、現実と数字を照らし合わせながら一歩ずつ前に進めていました。
しかし3期目は、ありがたいことに案件のご相談が重なったこともあり、目の前の業務に集中するあまり「経営」という視点を保つ余裕が少なくなってしまったと感じています。
結果として、
「今、数字はどうなっているのか」「次にどんなアクションが必要なのか」「何をやらなければ、どんなリスクがあるのか」といった当たり前の問いを、深く考える時間を十分に作れていませんでした。
大反省です。
当然ながら、数字を見ないままの行動は、感覚任せの意思決定になります。それで成果が出ていたとしたら、それはただの偶然でしかなく、きっと誰かがカバーしてくれていただけの話です。
数字を意識するからこそ、必要な行動が生まれます。偶然の売上ではなく、再現可能な売上構造を持つことが、経営の要なのだと痛感しました。
MBAのある授業で先生がポツリと語った印象的な言葉があります。
「戦場で、傷口を直視することを恐れてはいけない。出血している傷に気づかず突き進む者は死ぬ。逆に、小さな擦り傷を過剰に恐れて止まってしまう者も、やがては死ぬ」
ざっくりと書くとこんな言葉で、現状を鋭く言い当てられたようでした。
今、自分たちはどんな状態にあるのか?出血しているなら、どれだけの量で、どこに止血が必要なのか?
現実を直視せずに突き進むことも、過度に悲観して止まることも、どちらも経営にとっては致命的です。
状況を冷静に見極め、的確な処置を施す。
これが、3期目で私たちが(私が)できなかったことでした。
自分たちの今の立ち位置を、全メンバーが共通して理解しているか。そのうえで、どう進むかを共有できているかという「数字に向き合い、行動に責任を持つ文化」。
それをあらためて作り直すことが、次の一歩に欠かせないと感じています。
4期目を歩む姿勢について
何をやるかも大切ですが、どう在るかはもっと大切なのではないかと思うのです。
もちろん、やるべき実務は山積みです。
サービスの磨き込み、バックオフィスの整備、最新実績を反映した営業資料の更新、新サービスの検討や実験的な取り組み…
書いていて頭が痛くなってきました。
これらはどれも手を止めてはいけない、とても重要な取り組みです。
しかしこのような「やること」は、事業として継続するかぎり常に存在するものです。
だからこそ今ここでは、「どういう姿勢で在りたいか」という、より本質的な部分を考えてみたいと思います。
一度言語化しておけば、これは「行動の軸」として組織に根づいていくはずだと思うからです。
以下に、私が4期目を迎えるにあたって大切にしたい3つの姿勢を記します。
利己的ではなく利他的な意思決定
利己的な意思決定は、組織を静かに、確実に腐らせていきます。
これは、最近特にに実感していることです。
どれだけ言葉を整えても、どれだけ美しい理念を掲げても、日々のちょっとした選択が「自分のため」ばかりになってしまえば、やがてそれは組織の姿勢そのものになってしまいます。
私たちは相手の期待を想像し、誠実に応えていくことでしか信頼を得ることはできません。
それは社外のお客様に対しても、社内の仲間に対しても、まったく同じです。
「どうすれば喜んでもらえるか?」「何があれば、相手の不安を一つ減らせるか?」などなど、そんな問いを自分の中に常に持ち続けたいと思っています。
例えば小さな約束をきちんと守ること。当たり前のことです。
そして相手の望みを叶えることを自分の望みとして引き受けること。そうありたいと思います。
そして仕事とは、そういう姿勢の積み重ねです。
効率や利益を否定するわけではありません。けれど、「誰のための意思決定か」という一点だけは絶対にあやふやにしてはいけません。
正しい問いのためにイシューを意識する
私たちは、まだ「問い」が甘いです。
目の前のお客様の課題に向き合うとき、すぐに答えや手段を語ってしまうことが少なくありません。
それらはあくまで枝葉の論点です。
これまでの経験則で正しい答えを導き出せるかもしれませんが、それは手癖に頼っているだけであり、思考の放棄と同義です。
本当に大切なのは、「どこが本質的な論点(イシュー)なのか」を見極め、考えるることだと思っています。
その問いがズレていたら、どんなに美しく見える解決策もピントが合わないまま終わってしまいます。
ウェブサイトをつくる。記事を書く。写真を撮る。資料を整える。
そのすべての前に、そのすべての過程で「なぜ、いま、これをつくるのか?」「このアウトプットで、誰の、どんな課題を、どう解決するのか?」などの問いと向き合うべきです。
表面的な要望にただ応えるのではなく、その奥にある「まだ言語化されていない真の課題」に手を伸ばす感覚に近いかもしれません。そのような問いを立て、深掘りし、粘り強く考え抜く力が、組織として必要だと思っています。
間違った問いは、必ず間違った解を導いてしまいます。
イシューを見極め、問いを立てる力を鍛え、そこから考え抜いて課題を抽出すること。このプロセスが社内で正しく議論されるようになれば、成果物の質を根本から高めてくれるのではないかと感じています。
実務面も、教養面もバランスよく学ぶ
実務の学びは、プロとして当然のことです。業界の最新技術、競合研究、効率よく動くための知識、最新ツールの理解、成果を出すための事例や知見。それらは日々磨き続ける必要があります。
けれど、もう一方の車輪として「教養」も大切にしたいのです。
ここで言う教養とは、リベラルアーツだと思ってください。例えば哲学、歴史、文学、思想。科学や芸術などもそれに含まれます。
特に名著、名作、古典などの名が冠されている作品にこそ触れたいですね。というのも、時代やジャンルを超えて継がれてきた作品には、普遍的で本質的なものの見方や、人間理解の深さが宿っていると思うからです。
そもそも年十年も、何百年も、ものによっては何千年も語り継がれている思想や考え方や作品って、ちょっと異常だと思いませんか?人類にとって重要だからこそ語り継がれてきたそれらの知識には是非触れたいものです。
そのような作品群に触れることで、私たちの判断や発想にも奥行きが生まれると感じています。
「なぜこのサービスをつくるのか。」「なぜこの言葉を選ぶのか。」「なぜこの構造にしたのか。」などなどの問いに対して「深く、多面的に、多角的に考えられる人間であること」は、技術とは別の次元のプロフェッショナリズムだと思うのです。
一冊の本が、あるいは一つの思想が、日々の選択の質を変えてくれる。
教養的なインプットと実務的なインプット、この両輪がかみ合ったときに、ようやく本当の意味で信頼に足る仕事ができるのかもしれません。
土台から、もう一度つくる
さて、ここまで、反省も未来のことも、姿勢も含めてさまざまなことを言葉にしてきました。
でも結局のところ、4期目に私たちがやるべきことは、非常にシンプルです。
一言でいえば、「土台を見直す」ということに尽きます。
サービスの質。対話の丁寧さ。言葉の強度。プロジェクトの設計力。どれもが、少しずつ緩んでいたことを認めなければなりません。もちろんその時出来うる最善は尽くしていたつもりです。でも足りないと思うのです。
だからこそ今は速度を上げるのではなく、いったん立ち止まり、整える。自分たちの基礎を再点検するフェーズに入るべきだと思っています。
中国古典に「静以修身(せいをもってみをなおす)」という言葉があります。喧騒や焦りの中にあるときこそ、静けさをもって己を修めよという意味なようです。
私たちは、売上のトップラインだけを見て走る会社にはなりたくありません。それよりも、「目の前のお客様からのご相談に、最高のかたちで応える」ことに、全力を尽くす文化を貫きたいのです。
そのために行うことは本当に当たり前のことばかりです。
言葉を丁寧に選ぶことや、約束を必ず守ること。成果の本質を問い続けること、相談事に誠意をもって応えることもそうでしょう。
これらは一見すると当たり前のようなことばかりです。そしてこの当たり前を、当たり前のように高め、当たり前のようにそれを積み重ねていかねばなりません。
とても地味ですね。
しかしこの地味な心がけを愚直に行うことこそ大事だと持っています。地味なことにこそ本質的な意味があるためです。
そしてその先に、きっとまた新しい道が拓けると信じています。
そんな気持ちで4期目を進んでいこうと思っています。
4期目、頑張ります。