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「儲かる仕事」より「誇れる仕事」を選びたいという話

正月休みも、いよいよ最終日ですね。

今年はどんな仕事ができかなーとぼんやり考えていたときに、昨年あったある出来事をふと思い出しまして。

世間的に見れば、そこまで「衝撃的」というほどの話ではないと思うんですけど、僕にとっては仕事や生き方について考え直すきっかけになる出来事でした。

そのとき、はっきりと言葉になったのが「人に誇れる仕事をしたい」という感覚だったんですよね。

昔から頭では分かっていたつもりでしたが、あの時間を経てそれが腹落ちした気がしました。

今日は、その出来事と、そこから考えたことを書き残しておこうと思います。

なぜかいきなり紹介された情報商材ビジネスの人

細かい事情は伏せますが、ある日、知人から人を紹介されました。何やらすごい人がいるので松岡に会わせたいと。人と会うのは苦ではないので「別にいいですよ」とサクッとお返事をしたんですね。

その知人をAさんとしておきましょう。

どんな人なのか聞いてみると、「広告やYouTube運営ができる人」を探している人がいるらしく、その人を直接繋ぎたいと。なぜかAさんは僕のことをYouTube運用のプロだと思っていたようで、それが全く意味がわかりませんでしたが笑

ちなみに僕は一度もそんな仕事をやったことがありません。「WEB系」といえば全部同じに思えてしまうらしいですね。これはちょっと困ったものです。

で、実際会うことに。しかも寿司屋で。かつ高めの寿司屋です。僕は安い居酒屋とかの方が好きなんですけど。

当日までどんな人が来るのか詳しく聞かされていなかったのですが、話をしているうちに、その人がいわゆる情報商材ビジネスをやっていることが分かりました。

内容としては「転売系のノウハウを学べるオンラインサロンに入会してもらい、月額、あるいは年額の会費を支払ってもらう」というもの。

その金額と内容はなかなか衝撃的でした。正直、軽い気持ちで払える額ではないですね。でも中には、借金をしてでも参加する人がいるようで…

この時点で、「ああ、そういう世界の人か」と理解はしました。

「バズりこそ正義」という価値観に、ひどく疲れた

誤解のないように書いておくと、僕は情報商材ビジネスそのものを頭ごなしに否定したいわけではありません。自分は自分の事業として選ばないなってだけでして。

ただですねえ、その場で延々と聞かされた話が、どうにも自分の感覚と噛み合わなかったんです。

印象に残っているのは、人脈の話と「とにかくバズればいい」という考え方でした。

例えば、

  • 今の時代にデザイナーやクリエイターは必要ない
  • SNSで流行っているものをそのまま真似すればいい
  • 女子高生が出てくる動画を撮れば数字は取れる
  • 高いものを買って配る動画を作れば人は集まる
  • 付人アカウントを作り、どれだけ自分にカリスマ性があるか、儲かっているかを演出する
  • 全身を分かりやすいブランド品で固めてSNSに投稿する

などなど…

こうした話が、次から次へと出てくるんです。

「僕のことを何屋と思っているんだろうか…?」という疑問が何度も頭をよぎったものです。Aさんはずっと有り難そうに聞いてるし。

別に、これらの手法が“間違っている”と断じたいわけではないんですよ。実際、数字は取れるのかもしれませんし、短期的には、儲かるのかもしれませんし。よく見ますしね、そんな感じのアカウント。

ずっと違和感が拭えなかったのは、手法ではなく、生き方そのものだった気がします。

何かを積み上げていく話ではなく、消費し、消費される話ばかりだったことが気になるんです。意識の高そうな横文字と、何やら凄そうな人たちが周囲にいるという自慢で埋め尽くされた寿司屋の空間。

誇りや責任の話が、ほとんど出てこないんですよね。

最終的に寿司屋の大将に「YouTubeやらないんですか?僕が全力でプロデュースしますよ」とか言い始める始末。「やりません」と一撃で断られていたのが面白かったですが。

気づけば、かなり疲れていましたね。

普段なら二軒目、三軒目と付き合うことに抵抗はないのですが、その日は、お会計を済ませた瞬間にすぐさま帰宅しました。

儲かる仕事か、それとも誇れる仕事か

その場を後にしてから、しばらく頭がぼんやりしていました。

怒っていたわけでも、傷ついていたわけでもないんですが、ただ、妙に疲れてしまいまして。

何がそんなに引っかかっていたのかなーと考えてみたんですが「もし自分がこの仕事をしているとしたら、それを胸を張って人に話せるだろうか」という問いがあったとして、答えはどう考えても「ノー」だなってことでした。

儲けること自体を否定するつもりはありません。

会社を続ける以上、利益は必要です。利益を出せない仕事は、結果的に誰も幸せにしません。

ただ、ただですね、「儲かること」が主語になった瞬間に、何か大事なものが削ぎ落とされていく感覚があったんです。

僕は、自分が好きな人たちに「どんな仕事してるの?」と聞かれたときにあの仕事のことは口にできません。

「とにかくブランド物を着てバズらせとけば今の時代成功するんだよ。だからそんな人たちを集める高額で転売ノウハウを教えるオンラインサロンやってるんだ」なんて口が裂けても言えない。妻に言ったら殴られるでしょうね。

実際「金ならいくらでもあるんで松岡さんに発注させてくださいよ」と何度も言われましたが、全てお断りしました。

自分の感性、人生の歩みに対して恥ずかしくない仕事をしていたいからです。

できれば、少し誇りを持てる仕事をしていたいものですね。

そして利益はその結果としてついてくるもの。順番を間違えたくないんです。

そのことを、あの時間は強く意識させてくれました。

大先輩の経営者に相談してみたところ

この感覚は自分の偏見なんだろうか…?経営者たるもの、どんな仕事でも飛びつくべきだったのだろうか…?とちょっとモヤっとしまして、日頃からお世話になっている経営者の先輩方(n=3)に、この話をしてみました。

業種も規模も異なりますが、長く会社を続けてきた方々です。

反応は驚くほど似ていまして、話を聞いた瞬間、全員が「うわあ…」と声を漏らしたんですよね笑

続けて出てきた言葉も、ほとんど同じでした。

「この手のビジネスは、昔からある」「その場ではうまくいくこともある」「でも、長続きしないんだよね」

派手で分かりやすくて短期的な成果が見えやすいものの、時間が経つにつれて信頼も、組織も、関係性も、少しずつ摩耗していくビジネスのように思えていたんですが、そのようなビジネスは昔から後を絶たないようです。

「長く会社をやりたいなら、結局、堅実で実直な仕事をしよう」という言葉をみなさん口にされていました。

もちろん、情報商材ビジネスを選ぶ人の人生を否定するつもりはありません。生き方は人それぞれです。

ただ、僕が歩きたい道とは明らかに違うんです。

派手ではないけれど、地味で手触りのある仕事。

信頼を積み上げるスピードは遅くても簡単には崩れない仕事。

やっぱり自分はその道の方が好きなんだなと、あらためて思いました。

点滴穿石、孜孜不倦。地味で地道な道を歩む

この出来事は、自分がどこへ向かって生きたいのかをあらためて自覚させてくれました。

一瞬で結果が出る仕事でもなければ、外から見て分かりやすい成功は得られないかもしれませんね。

しかしこの地味で地道な歩み方こそがお客様のビジネスを支える力になるし、自分自身が誇りを持って仕事を続けられる方法だと思いました。

派手な成功を否定するつもりはありません。

ただ、僕らが選びたいのは長く続くことです。

そして信頼が少しずつ積み上がっていくことです。

そして、振り返ったときに「ちゃんとした仕事をしてきた」と言えることです。

目先の数字や話題性よりも手触りのある仕事。派手さよりも確かさ。

遠回りに見えるかもしれませんが、この道しか歩けないし、この道を歩きたいと思っています。

誇れる仕事を、誇れるやり方で。

今年も、その積み重ねを続けていきます。

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Kentaro Matsuoka