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足さない、必要最小限の素材で作られた「音」と。

音楽のジャンルで、ミニマルミュージックというものがあります。

聴いたことがあるような気もするし、ないような気もする単語です。

ミニマルという言葉と、ミュージックという言葉の意味を既に知ってさえいれば、繋げて字面からなんとなく判断できるからなのかもしれません。

私自身、昔からミニマルミュージックと呼ばれるジャンルに属する曲が好きなのですが、いざ「どんな具体的に音楽ですか」と聞かれると、上手な説明が見つからないものです。

今回は、そんな少し捉え所がないのに何故か惹かれる不思議な音楽ジャンルについて、自分なりに今一度考えてみたいと思います。

目的地に向かわない、少し特別な音楽体験

音楽の楽しさには色々あります。

たとえば盛り上がりがあり、転調があり、サビで気持ちが一気に開けていくような快感。そうした「展開」を軸にした音楽は、私たちにとってとても馴染み深いものです。私も、なんとなく好きなサビを聴きたいがために、その曲を何度もリピートしたり、終いには特定の部分だけ繰り返し聴いてしまうこともよくあります。少し怖いですね。

一方で、ミニマルミュージックには、そういった「展開」を軸にした音楽とは少し違った魅力があります。

誰にでもわかりやすい起承転結を用意するのではなく、同じようなフレーズが繰り返され、ほんのわずかな変化が積み重なっていく。曲がどこかに向かって進んでいるというより、音がその場にあり続けるような感覚があるのです。(※何いってるかわからないかもしれないので、最後にプレイリストを載せてみました。)

一見すると単調でも、聴いているうちに何かが少しずつ変わってくるような気がする、あの独特の体験はミニマルミュージックというジャンルでしか味わえないものだと思います。

反復される音型に没入する

ミニマルミュージックの特徴としてよく挙げられるのが、「反復」です。

一定のリズムの中で、似たような音型が何度も繰り返されます。反復というと、単調で退屈なイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、決してそうではありません。

ミニマルミュージックにおける「反復」とは、聴き手が「変化を追いかける」という普段の聴き方から「音に没入する」ような聴き方するためのスイッチのようなものだと思います。

同じような音型が続いているのに、なぜだか飽きない。気づくと、音楽の側ではなく、自分の集中の置き方が変わっていることがあるのです。

こと「反復」という特徴において、フィリップ・グラスの作品は欠かすことができないものだと思います。(※本人はミニマルミュージックと呼ばれることを嫌がっているようですが、わかりやすいので選ばせていただきます。)

反復されるフレーズはとてもミニマルなのに、なぜか冷たくはありません。淡々としているのに、どこかに優しい温度があり、気持ちが乗る余白が残されている感じがたまらなく素敵です。

クラシック音楽がお好きな方なら既にご存知かもしれませんが、Yuja Wangをはじめとした気鋭のクラシックピアニストのコンサートでも、アンコールやカーテンレーザーでフィリップ・グラスの曲が演奏されることが意外とあります。

ミニマルはジャンルというより、方法論かもしれない

ミニマルミュージックを聴いていると、これは単に音楽のジャンルというより、「作り方」や「考え方」に近いのではないかと思うことがあります。

たとえば、なるべく少ないルールで成立させる設計。要素を増やさず、材料を絞って、構造を明確にする。そうすると、少しの変化が意味を持つようになります。

ミニマルという言葉は、ともすると「ただひたすら無駄を削ること」を指してしまいがちです。

でも本質は、ただ削ったり引いたりすることではなく、対象を成立させるための適切な引き算をすることだと思います。しっかりと意図を持って、本当に必要なものだけを残す。その結果として、空気が整い、余白が生まれ、全体が機能しはじめるのだと思います。

ちょっとだけアナロジーが効く気がしませんか。気づけば、音楽や芸術の外側にあるものまで、同じ目で見ようとする自分が現れるかもしれませんね。

自分の好きなもの、ことの底流に気づかされて

この音楽ジャンルに触れて、自分の中で少し腑に落ちたことがあります。

自分が長く好きだったもの、ことの底流にも、こうした引き算や余白の哲学のようなものが流れていたのかもしれない、ということです。

たとえば、私の大好きなアンビエント(環境音楽)もまた、目的地へ向かう音楽というより、まるで家具のように環境としてそこに在る音楽です。静けさがあり、反復があり、メロディ自体の輪郭も曖昧な作品も数多く存在します。

理由を言語化してこなかっただけで、無意識のうちにそういったものに惹かれていたのかもしれませんね。

振り返ってみると、フィリップ・グラスやスティーヴ・ライヒといったミニマルミュージックというジャンルにおける代表的な作曲家の音楽を、ミニマルミュージックという言葉を知るずっと前から聴いていました。

特定のジャンルとして意識していたわけでは全くなく、ただ耳馴染みが良いから聴いていただけなのですが…。

でも今、その理由がようやく少しわかった気がします。

削ぎ落とした先に残った本当に必要なものが、過度に主張しすぎることなく伝わってくるような、そんな音楽、そんなもの、そんなこと。そんな「最小限の芸術」の思想が底流にあるものに惹かれてきたのかもしれません。

色々と偏食気味で自分でも捉え所のない私ですが、少しだけ自身の趣味嗜好のルーツがわかってきたような気がしました。これ以上ふわふわとした内容を語ると、またアラサーが”読むと痛みの走るポエム”を書いている、と社内からの風当たりが強くなるので今回はここまでに。

最後に、私の好きな音楽たちを載せてみます。仕事があまりにつらい時、息抜き程度にぜひ聴いてみてください。

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Ryota Kobayashi