0
  • Editorial
  • Kentaro Matsuoka

書き続けて見えた景色。Little Press200記事を越えて

今年の5月に公開した「書き続けて見えた景色。Little Press100記事を越えて」から、あっという間に5ヶ月が経ちました。

そしてついに、社内ブログ「Little Press」は200記事を達成することができました。

200本という数字をあらためて見ると、なかなかの量ですね…。アクセス数度外視のこのLittle Press、よくもまあここまで続けてこられたなと、少し感慨深い気持ちになります。

これを機にこの5ヶ月間に起きたことや、変化の手触りを、今回は少し丁寧に振り返ってみたいと思います。

量から質への転換。発信のリズムを整える

前期が終わる8月までは、毎日更新を徹底していました。

しかし、今期が始まる9月からは思い切って「週3回更新」へと切り替えました。

理由は単純です。更新すること自体が目的になってしまっていたからです。

毎日記事を出すことは一見努力しているかのように見えますが、続けるうちに「何を伝えたいのか」よりも「今日も更新できたかどうか」に意識が向いてしまう瞬間がありました。

当たり前ですが、僕らのアウトプットは、良いインプットがあってこそ成立します。

どんなに記事の数を重ねても、自分たちの中身が乾いていては良いものは出せません。だからこそ、まずはしっかり吸収し、考え、感じる時間をつくることにしました。

発信を止めるのではなく、「呼吸を整えるための間」を取り戻すこと。それが、今期最初の大きな決断でした。

感性を耕す時間をつくるために

「良いアウトプットは、良いインプットからしか生まれない」。

繰り返しますが当たり前のことです。しかし、そう頭では分かっていても日々の業務に追われていると、どうしてもインプットの時間が後回しになってしまいます。

ということで、今期から会社としてインプットのための時間を意識的に確保する取り組みを始めました。特定の曜日や時間を“自由に自分を満たす時間”として設定することにしました。

その間は、仕事をしてもいいし、どこかに出かけても構いません。大切なのは、何らかのかたちで自分の感性に刺激を与え、それを次のアウトプットへとつなげる姿勢であり、自分の人生を豊かにしようという観点です。

この時間は、単なる休憩ではありません。

読書、美術館、映画、旅、会話などなど、そうした体験を通して、自分の視点を少しずつ耕していく時間です。

効率や生産性では測れない「自分の人生を豊かにする創造の種」を育てることが目的です。

自分を豊かにし、他者や社会への感受性を磨いていく。そんな時間を当たり前に持てる会社でありたいと思っています。

私たちの「Little Press」はどこを照らす場所でありたいか

企業のブログには、実にさまざまな形があります。

技術的なTipsを共有する会社もあれば、社員の一日を紹介する会社、SEO記事を量産する会社、インタビュー主体で世界観を見せる会社もあります。

では、私たちはどんな発信をしていくべきなのか。更新頻度を見直したこのタイミングで、あらためてその問いに向き合う機会が増えました。

私たちは制作会社ですが、文化的な手触りのある仕事をしたいと常々思っています。単にクライアントの課題を解決するだけでなく、「言葉」「表現」「企画」を通して、社会や人の感性に触れるような仕事をしたいなと思っています。

先日、弊社小林が書いた『「遠い参照」と「近くの学習」のあいだで揺れる。』という記事の中で記載していた文章。

仕事をしていると、学びにも二つの方向があると感じます。

一つは、明日からの行動に直結する「近くの学習」。もう一つは、すぐには役に立たないけれど、思考の土壌を耕してくれる「遠い参照」。

前者は効率的で、成果につながりやすいですが、後者は非効率で、すぐには意味が見えません。けれども、どちらが欠けても仕事はどこかで行き詰まります。

「明日からの行動に直結する近くの学習」と、「すぐには役立たないけれど思考の土壌を耕す遠い参照」という2つの学び。

この2つのバランスは、私たちが大切にすべき姿勢なのではないかと思います。

近くの学習だけに囚われてしまうと、効率的ではあっても文化の厚みが失われてしまいますし、逆に、遠い参照ばかりを追っても、現実の手触りがなくなってしまいます。

その間を往復しながら、目の前の仕事の意味を考えなくてはなりません。

そんな観点を、私たちのLittle Pressは持ち続けたいと思っています。

あくまで現時点での私の考えとしてですが、Little Pressは「遠い参照と日々の内省を共有する場所」でありたいと感じています。

無理にアクセス数を求めず、技術論やSEOに寄せず、メンバーそれぞれが感じたこと、考えたことを丁寧に書いていく。

そんな「無理のない、やさしい発信」を重ねていける場所でありたいなと。

それが、今の私たちにとってのLittle Pressなのかもしれないなと思ったりしています。

300記事に向けて

日々、目の前の仕事に追われていると、私たちはすぐに「手段」を目的にしてしまいます。

中川が書いた『とりあえず動くことよりも「考えて動く」組織づくり』の中には、

本当に強い組織とは、行動量が多いチームではありません。考え抜いたうえで、意味のある行動を選び取れるチームです。

という言葉があります。

考え抜き、その上で更新すること、作ること、届けること。どれも大切な行為ですが、その一つひとつが「なぜそれをするのか」という問いと結びついていなければ、やがて自分たちがどこへ向かっているのかを見失ってしまいます。

それができるチームを今期は作りたいものです。

さて、今回の更新ペースの見直しや、インプットの仕組みづくり、そしてLittle Pressの位置づけの再考は、
いずれも「自分たちの呼吸を取り戻す」ための試みでした。

制作会社という特性上、効率や成果を求められる世界の中にありながらも、同時に「文化をつくる」という長い時間の感覚も抱えています。

その2つのリズムをどう共存させるか。それを考え続けることこそ、私たちの仕事の本質なのかもしれません。

Little Pressは、そんな思考の記録であり、遠い参照と日々の内省をゆるやかに編んでいくための場所でありたいものです。

ここで生まれる小さな言葉たちが、私たち自身の未来と、誰かの日常を少しだけ明るく照らせれば、とても嬉しいことです。

毎日更新からちょっと歩みは遅くなりますが、次は300記事目を達成した際に、振り返りをしてみようと思います。

See works

Kentaro Matsuoka