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  • Kazuya Nakagawa

とりあえず動くことよりも「考えて動く」組織づくり

弊社は4期目を迎えましたが、まだ多くの課題があると感じています。

代表が執筆した「中長期における生存戦略で大事なことは何か」にもあるように、これまでの私たちは「売上を上げること」に意識を向けてきました。

もちろん、売上は会社を動かすための大切な燃料です。しかし、それだけを追いかけていては、組織としての持続性や健全さを見失う危険もあります。

本当に大切なのは、正しく、そして長く生き残るための意識を持つことです。そのためには、短期的な成果だけにとらわれず、行動の方向性を定める戦略的な思考が欠かせません。

しかし、プロジェクトの増加や業務の複雑化に伴い、考える前に動き出してしまうケースもあります。行動量が増えるほど、表面的には頑張っているように見えますが、明確な意図や優先順位がなければ、成果は積み上がりません。

だからこそ、場当たり的な施策を減らすためには、単に打ち手を増やすことではなく、「どの方向に力を使うか」という判断軸を持つことが重要だと考えています。

なぜ「場当たり」な動きが生まれるのか

現場では、すぐ動ける人が評価されやすい傾向があります。

もちろん、スピード感を持つことは重要です。しかしその一方で、動くことそのものが目的になってしまう危うさもあります。

たとえば、新しい施策に着手すること自体は、一見すると前向きな行動に見えます。しかし「何のために」「どんな成果を目指して」行われているのかが明確でなければ、行動は次第に方向を失います。

結果として、プロジェクト本来の目的を見失い、チーム内でもなぜこの方向に進んでいるのかが曖昧になってしまいます。時間をかけて努力は積み上げているものの、成果にはなかなか直結しない状態が生まれます。

行動は、戦略に基づいてこそ意味を持ちます。スピードとは、単に「早く動くこと」ではなく、「正しい方向に早く進むこと」です。

だからこそ、スピードを出す前に方向を定めることが、組織にとって最も重要なのだと思います。

また戦略的に見える行動であっても、実は中身のない場当たりであることもあります。たとえば、KPIを掲げて数値を追っていても、その裏に明確な仮説や戦略がなければ、取り組みは形骸化していきます。

「トラフィックを増やそう」「CTRを上げよう」といった表面的な目標ばかりを追うと、部分最適に陥り、チーム全体が短期的な課題対応に追われる動きになりがちです。

その結果、中長期的な成長の方向性が見えなくなり、チーム全体の体力が少しずつ削られていき数字も成果も残らない状態になってしまいます。

「場当たりな施策」の特徴とリスク

場当たり的な行動のリスクは、頭では理解しているつもりです。それでも、気づけば同じような状況に陥っている経験を何度もしてきました。

その背景には、成果を出さなければというプレッシャーや、とりあえず何かやらなければという焦り、他社がやっているから自分たちもという同調心理があります。

これらが重なると、思考よりも行動が先行してしまい目的のないアクションが連鎖します。結果としてやった感だけが残り、何が失敗の原因だったのかがわからないまま時間だけが過ぎていきます。

場当たり的な施策には、いくつかの共通点があります。

まず短期的な数字を埋めることが目的化し、長期的な視点が欠けやすい点です。

数字を追うこと自体は悪いことではありません。ただ、その行為が目的になってしまうと、施策から得られる学びや、次につながる改善の方向性が見えにくくなります。

また、「なぜ行ったのか」「どう改善するのか」といった検証のプロセスが曖昧になりがちです。

実行すること自体がゴールになってしまえば、成功や失敗の理由を言語化できず、再現性のあるナレッジが組織に残りません。

さらに、意思決定の責任が不明確になるというリスクもあります。

成果が出なかったときに、「誰が決めたのか」「なぜその判断をしたのか」が曖昧なまま終わってしまうと、振り返りの機会が失われ、同じ過ちを繰り返す可能性が高まります。

「場当たりな施策」は、意思決定のプロセスが欠如した状態となるため、地図を持たずに航海へ出るようなものです。

一見すると、前へ進んでいるように錯覚しますが、どこに向かっているのか誰にもわからない。そんな不確実な状態が、組織を消耗させてしまうのだと思います。

場当たりから抜け出すために気をつけるべきこと

どうすれば場当たり的な動きを減らせるのか。さまざまな書籍や実践例を整理してみると、3つの視点が鍵になると感じています。

まずは目的を言語化することです。

「なぜこの施策をやるのか」「何を解決したいのか」という問いを明確にすることで、行動に一貫性と方向性が生まれます。

目的が曖昧なままでは、努力が分散し短期的な成果が出ても再現性のある成長にはつながりません。行動の理由をチームで定義することが、戦略の出発点になります。

次に再現性を持たせることです。

施策を「仮説→検証→共有」というサイクルで回し、チーム全体の学びとして蓄積していくことが重要です。成功を偶然で終わらせず、仕組みとして残すことが大切です。

最後に、「やらないこと」を決める勇気を持つこと。

戦略は、何をやるかを決めること以上に、何をやらないかを明確にすることが大切です。漠然とした施策ほど、チームのリソースを奪ってしまう結果になります。

重要なのは「どんな打ち手を持っているか」ではなく、「どの打ち手を選ぶ力があるか」です。

また、これらを個人が理解していても、チームとして実行できなければ意味がありません。

時間の経過とともにプロジェクトや施策本来の意図が薄れ、「やること自体が目的化」してしまうことも少なくありません。

防止するために、ミーティングなどで目的の再確認を続けることや、「誰が」「どんな意図で」「何を決めたのか」を共有ツールなどに残す仕組みを整えることが重要です。意思決定の背景を可視化しておけば、再発防止や改善がしやすくなります。

「動くこと」より「考えて動くこと」

本当に強い組織とは、行動量が多いチームではありません。考え抜いたうえで、意味のある行動を選び取れるチームです。

戦略とは、新しいことを次々と試すことではなく、やらないことを明確にすることでもあります。限られたリソースのなかで、何を選び、何をあえて選ばないかといった取捨選択こそが戦略の本質です。

考えて動くとは、慎重になることではありません。判断のスピードを落とすのではなく、判断の精度を上げることが大切だと考えています。

もちろん、私たちもまだその理想には届いていません。しかし、考えて動くという意識を組織全体で持ち続けることで、結果は大きく変わっていくはずです。

日々、状況は変化し判断の連続ですが、一つひとつの選択を積み重ねることで、組織をより強くできればと考えています。

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Kazuya Nakagawa