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我々が普段、何気なく使っている記憶媒体について考える

私たちは、普段何気なくPCやスマートフォン、デジタルカメラなどの電子機器を使っています。

そして、それらにはストレージ、つまりハードディスク(HDD)やメモリーカードのような記憶媒体が使われています。

近年では記憶媒体の容量が増え、大容量のものが低価格で購入できるようになったことから、普段あまり意識して使うような機会はありませんが、電子機器を利用するうえでなくてはならないものです。

しかし、私がPCを使い始めた2000年代初頭は、画像や動画、音楽をはじめとした様々なメディアファイルが年々高品質化し、それと共に容量も増加してきた頃。

電子機器全般の価格が高かった当時は、2TBのHDDが1万円台前半で購入できる今でこそ当たり前になった「あらかじめ余裕を持った記憶媒体を用意する」という選択肢はありません。

私の家にあった失敗作でお馴染みのWindows MEを搭載した懐かしのPCも、250MBのHDD2つで500MBという、スマートフォンのメモリにすら遠く及ばない慎ましいものでした。

そのため、快適にPCを利用するためには、様々な工夫をする必要があります。

例えば、外付けHDDがあまりメジャーでなかった当時は、容量を圧迫しそうなものは随時USBやメモリーカードに移すなど、気が遠くなるような作業をしていました。

当時、容量の少なさからすでに過去の遺産となりつつあったフロッピーディスクを下に見ていた節がありましたが、今思えば五十歩百歩だったのかもしれません。

Windows XPの登場と共に急激に増えたストレージの容量

Windows MEが登場してから1年を待たずしてXPがリリースされました。

XPにの登場と共に、世間の一般的なストレージは、ME時代の数百MBから数十GBへと大幅に増えます。

近年では、スマートフォンのデータ通信量に対して「ギガ」という言葉が使われていますが、私にとってのギガはまさにこの出来事でした。

「なんで1年でここまで容量の価値が変わるのか」、「今まで時間をかけて空き容量を空けていたのはなんだったのか」と、非常に動揺したことを今でも覚えています。

このように、2000年代初頭はまさにストレージ容量のインフレとも言える状況でした。

しかし、当時まだPCを購入してから間もないこともあり、我が家に買い替えという考えはありません。この複雑な気持ちは、Windos Vistaがリリースされる2007年まで引きずりました。

私の家がVistaに買い替えた頃、すでにストレージ容量は500GBが当たり前になっていたと考えると、この急激な容量増加がいかに異常だったかがわかります。

当時世代の方は、買うタイミングを間違えてしまった方も少なくないはずです。

一般的な容量基準の増加とともに、下がり始めたストレージの金額

世間で数百GBのストレージの容量が当たり前になってくると、メモリーカードやUSBの価格も軒並み手頃に。

数年前には128GBのマイクロSDが4万円以上と高額だったにも関わらず、2010年頃には2万円前後くらいで購入できるまでに下がりました。

この頃になると、ソリッドステートドライブ(SSD)が徐々に一般的なPCにも搭載されるようになります。

「OSをSSDに入れると起動が早い!」と、特に何も考えずに感動したことを覚えています。しかし、HDDと比べると容量あたりの金額は非常に高く、128GBで数万円というような価格。

そのため、今でこそ数TBのものが当たり前ですが、当時一般的に販売されていたSSDは容量も少なく、多くても256GB程度でした。OSのみSSDにインストールし、メインストレージにはHDDを使っていた方が多い印象です。

しかし、このSSDがラップトップを飛躍的に普及させたと言っても過言ではないと私は思います。

ちょっと落としただけで壊れるし、使っていると読み書きが遅くなるHDD

HDDの壊れやすさ

私は持ち運びの便利さから、Windows 7からはデスクトップとラップトップを併用しています。

そのため、HDDを搭載したラップトップの脆さに関しては熟知していると自負しています。

そもそも物理的なディスクを磁気ヘッドで読み取ったり書き込んだりするHDDは、振動にめっぽう弱いです。そのため、ちょっと落としたり振動を加えると、データが飛んだり壊れたりすることもあります。

一度、PCを入れたリュックを床に落とした際に、大切なデータが消えてしまい、かなり焦った記憶があります。

それからは、持ち運びの際には衝撃を吸収するケースに入れていたのですが、落としても、衝撃を加えてすらいないのにデータが飛んだ経験があります。多分タイミングが悪かったのでしょう。

これはiPodに関しても言えます。かつてiPodには、十数GBの大容量の割に安価な「iPod classic」というモデルが存在しました。

しかし、このモデルはストレージにHDDを使っているため、ハードに使用すると壊れてしまいます。

恥ずかしながら私は、iPod classicも壊した経験があります。

HDDは使っていると読み書きも遅くなる

HDDのダメなところは、脆さだけではありません。

使用を重ねると読み込み書き込みが遅くなるのも、ちょっと嫌なところです。

HDDは、壊れやすさの原因になっている物理ディスクに読み込んだり書き込んだりすることで、データを扱います。

そして、物理ディスクはセクタという記憶する場所があり、それがドーナツのように集合して並んだトラックが。さらに、シリンダというトラックの集合によって構成されています。

HDDはこのような領域にヘッドがデータを書き込んで行くのですが、物理ディスクなだけにヘッダの近場に集合しているデータの方が早く読み書きができます。

ところが、追加したり消去したりデータは、毎回同じ容量とは限りません。

例えば10個のセクタを持つトラックがあって、そこにセクタ2個分、5個分、3個分のデータが順に入っているとします。

「⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎」こんな状態です。

そこから2個分と3個分のデータを消すと「–⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎—」こんな状態になります。

そこに4個分のデータを入れるとすると「◎◎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎⚫︎◎◎-」こんな感じです。

HDDを長く利用していると、このようにデータが分割されてしまうため、その分の距離だけ長くヘッドを動かす機会が増えてしまいます。

これが、HDDを長く使っていると読み込みや書き込みが徐々に遅くなる大きな要因です。

この問題を解消するには、一度別のストレージにデータを移すなどした後、これらの領域を作り直すフォーマットの作業が必要になります。

SSDの場合は物理的なディスクを使っていません。さらにデータを書き込む際は、古いデータを別の空いている場所に移動させてから元の場所を消去し、古いデータに近い場所から新たなデータを書き加えます。

つまり、いつでも大体HDDより早いのです。

個人的にはSSDがラップトップの進化に大きく貢献したと思います

近年のラップトップは、振動や衝撃に弱いHDDに代わり、SDDが搭載されたことで持ち運んでも安心になりました。

今、私たちが場所を問わずに仕事ができているのも、この技術によるところが大きいでしょう。

さらに、近年ではSSDもこれまでよりも容量あたりの価格が手頃になり、2TBの外付けでさえAmazonで2万円程度で購入できるようになりました。

Windows MEの頃の少ないストレージを工夫して、時間をかけながら使っていた時代のことを思い出すと、信じられない進歩です。

当時の私は、はじめから大容量のストレージを用意し、余裕を持って使う日が来るとは想像もできませんでした。

何事にも言えますが、日常的に体感していると、当初は感動し、ありがたく感じていたことが、徐々に当たり前に変わってしまうことがあります。

今回ストレージにまつわる私の体験を思い起こしてみて、たまには当時を振り返って当たり前の基準を見直すことも大切なのではないかなと思いました。

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Takahiro Ichikawa