いきなりですが、「好きな色は何?」と聞かれると、白と黒だと答えます。どちらか一方ではなく、どちらも同じ重さで好きなんですよね。
僕の私服はほとんど黒ですが、それは扱いやすいからというだけであって実際の嗜好の優劣とは少し違います。
白と黒ってなんか不思議な色だなーと思っています。色でありながら、色であることを放棄しているような気がするんです。どちらかというと現象に近いというか。
意味を強く主張せず、役割を固定しない。でもどんな色でも受け入れる余白。
白は優しい色ですが、「ただきれいなもの」として扱うことにはどうしても違和感があるのです。その優しさがなんらかの極限まで達した時、どんな表情を見せるのか。そこに興味があったためです。
白には、清潔さや無垢、優しさといったイメージがよく結びつけられる気がします。しかし僕は白をそうした徳目として見たことがあまりありません。むしろ真逆です。
白はなんだか無骨で、無機質で、なんならちょっと怖くて不気味なだと感じています。
いきなりですが、世界的名作である刃牙シリーズの一角を担う“刃牙道”で、花山薫先生が宮本武蔵氏と対峙する場面。こんな言葉が添えられます。
光射すときそこは……
優しさに包まれる…
ならば……
ならば
もっと強く……
もっと明るく…
「もっと光を…」
違う……
影を生み出すから
光は優しい
「影」をも容赦無く照らし尽くす時 光は……
「狂気」を帯びる
この言葉が本当に好きなんですよね。
光は優しい。しかし、影を逃がさず、すべてを照らし切ってしまうほど強くなったとき その優しさは暴力に転じる。著者、板垣恵介先生の言葉の鋭さ、観察眼に驚かされっぱなしです。
白は、ある意味でとても静かです。しかしその静けさは無音ではない気がします。巨大な空間に満ちた低周波のような轟音を、常に内側に抱えていルような気がするのです。
広大で、均質で、どこまでも続くがゆえに、 こちらの感覚や認知のほうが歪み始めてしまうような感覚。怖いですね。
温度があるのに冷たい。とても明るいのに、正体がわからない。
不気味な色です。
マリオ・ジャコメッリの写真を見ると、いつもその感覚を思い出します。
彼の白は美しいという言葉では回収しきれません。余白は広大なのになんだか息が詰まります。暴力的なコントラストの海。何が言いたいのかわからない不自然な余白。なんて暴力的で美しいことか。
白が世界を優しく包むのではなくこちらを凝視してくるような感覚でした。
今回は僕なりに解釈した白、静けさの中に狂気を含んだ白、余白でありながら確かな強度をもって立ち上がってくる白、そんなどこか無機質な「白の要素」を含んだ写真たちを並べてみようと思います。












