最近はあまりやらなくなりましたが、子どもの頃を振り返ると、よくゲームをしていました。
ジャンルはいろいろありましたが、ドラクエやFF(ファイナルファンタジー)といったRPGは、よく遊んでいた記憶があります。
社会人になってからゲームをする機会は減りましたが、仕事でプロジェクトに関わるようになってから、ふと「プロジェクトはRPGに似ているな」と感じることがあります。
RPGでは、最初から最強の装備を持っているわけでもありませんし、仲間もいない状況です。
ストーリーを進めていく中で経験値を積み、時には戦闘に敗れながらも少しずつ強くなっていきます。
仕事のプロジェクトも、それに近いものがあります。
最初から完璧な計画があるわけではありません。想定外のトラブルが起きることもあれば、途中で方針を変えなければならない場面もあります。
それでも、ゴールに向かって進んでいく過程こそが、プロジェクトの面白さであり、難しさでもあります。
役割を持ったチーム編成の大切さ
物理攻撃に特化した剣士や弓使い、回復を得意とする魔法使いや僧侶など、RPGにはそれぞれの役割を持った仲間が登場し、パーティを組みます。
敵のレベルにもよりますが、全員が攻撃役ではうまくいきませんし、回復役がいなければ、長い戦いには耐えられません。防御を固める人、状況を見て支援する人も必要です。
これはプロジェクトも同様です。
案件を獲得する人、戦略を設計する人、記事やサイトを制作する人、広告を運用する人、全体を管理する人、クライアントと調整する人、品質を確認する人などなど。
それぞれの役割が噛み合って、プロジェクトは前に進みます。
ただし、現実のプロジェクトがRPGと大きく違うのは、メンバーを自由に操作できないことです。
ゲームであれば、「たたかう」「ぼうぎょ」「まほう」「にげる」といった選択肢を選べます。「ガンガンいこうぜ」「いのちをだいじに」のように、全体の方針を指示することもできますが、現実の仕事ではそうはいきません。
「慎重に進めよう」と伝えても、その慎重さの受け取り方は人によって違います。「今回はスピード重視でいこう」と言っても、どこまで品質を保つべきかの感覚には差があります。
メンバーには、それぞれの考え方がありますし、得意不得意もあります。その日のコンディションもあれば、抱えている別の仕事もあります。だからこそ、プロジェクトでは関係性が重要になります。
ただ役割を割り振るだけではなく、相手が何を得意としているのか、どこで迷いやすいのか、どのような伝え方をすると動きやすいのかを理解することが必要です。
そして、その関係性は、誰か一人に負荷を集中させないためにも重要です。もちろん、仕事にはどうしても属人的な部分があります。デザイナーの感覚、記事編集の感覚、広告運用者の判断基準など、完全にマニュアル化できない領域は少なくありません。
だからといって特定の一人に依存しすぎると、場合によっては品質が保てなくなり、プロジェクトが止まってしまうこともあります。
一本の柱だけで支えている橋のように、その柱に負荷が集中すれば、全体が不安定になってしまいます。これは、RPGでいえば回復役が一人しかいないのに、その回復役が倒れた瞬間にパーティ全体が崩れるようなものです。
もちろん、何かの領域において強い人がいることは大切です。ただ、その人ばかりに頼りきると、チームで進めているはずのプロジェクトが、いつの間にか個人競技のようになってしまいます。
大切なのは、それぞれの役割を理解しながら、互いに補い合える状態をつくることです。
誰か一人が倒れたら終わるのではなく、周りが支えあう関係性があってはじめて、プロジェクトは長い戦いに耐えられるのだと思います。
RPGと現実で異なる「経験値」の捉え方
RPGでは、敵と戦い勝利することで経験値が入ります。
レベルが低い敵ばかり倒していても、なかなかレベルは上がりません。少し強い敵に挑み、時には負けそうになりながら少しずつレベルが上がり、技を覚えたり魔法を習得したりして、できることが増えていきます。
このように、ゲームの経験値はとてもわかりやすいものです。
戦えば経験値が入り、一定の数値に達すればレベルが上がります。攻撃力や防御力、HPやMPも数字で表示されるため、自分がどれくらい強くなったのかを確認できます。
一方で、現実の仕事には、そうした明確な経験値やレベルはありません。
実務を通して学ぶことはあります。昨日より少し判断が早くなったり、以前より相手の意図を汲み取れるようになったり、失敗しそうなポイントに先回りできるようになったりすることもあります。
けれど、それはゲームのように数値で表示されるものではありません。
むしろ、少し成長した気がしても、翌日には元に戻ったように感じることがあります。できるようになったと思ったことが、別の場面では通用しないこともあります。経験を積んでいるはずなのに、同じような失敗をしてしまうこともあ少なくありません。
だからこそ、仕事における経験値は、ただ経験しただけでは積み上がりにくいものです。
成功体験だけでなく、失敗した経験も含めて原因を整理し、次に活かせる形にすることが、仕事における経験値なのだと思います。
私自身、記事編集やクライアントとの打ち合わせなど、実際に手を動かしたり、アウトプットしたりする機会が多い立場にあります。
だからこそ経験を振り返り、言語化し、次に使える形にしてはじめて、自分の経験値になるものだと感じています。
事前準備の大切さ
RPGでボスに挑む前には、事前準備が必要です。
回復アイテムや装備は整っているか、レベルは足りているか、敵の弱点は何かといったことを確認せず、勢いだけで突っ込むと、たいてい負けてしまいます。
ただし、やり直しが効くのはゲームならではです。事前にネットなどで敵の弱点や攻略方法を調べることもできます。
一方で、プロジェクトはそうはいきません。
ゲームと同じように事前準備が重要であることは変わりませんが、当然ながら、何度もやり直せるわけではありません。
クライアントとの打ち合わせであれば、資料は整っているか、数字の根拠はあるか、万が一の対応策はあるかといった部分は少なくとも事前に確認しておく必要があります。
また、起こりうることをどこまで想定できているかも大切です。
「普段からやっているから大丈夫」「関係値ができているから大丈夫」「いつも通り進めれば問題ない」。そうした安心感に頼りすぎると、見落としが生まれます。
それは、ある意味では失敗の可能性を残したまま進めている状態なのかもしれません。
プロジェクトを進めるうえで大切なのは、不安要素を事前に一つずつ潰しておくことです。
小さな確認を重ねることや起こりそうなズレを想定しておくこと、万が一のときに、どう動くかを考えておくことなどの積み重ねが、プロジェクトを安定して前に進める力になるのだと思います。
締めに
RPGであれば、どこに向かえばいいのか、どの敵を倒せばいいのか、どうすれば強くなれるのかといった部分は、比較的はっきりしています。試行錯誤はあっても、世界のルール自体は変わりません。
一方で、プロジェクトには明確な正解がないことがほとんどです。
どの選択が正しかったのかは、その場では判断できないこともあります。うまくいったと思ったことが、後から見れば最適ではなかったと気づくこともありますし、逆に遠回りだと思っていたことが、結果的に効いてくることもあります。
つまり、プロジェクトは「正しい進め方」をなぞるものではなく、自分たちで決めたことを正解にしていくものだと思います。 RPGのように、レベルやステータスが見えるわけではありません。どこまで成長できているのかも、はっきりとはわかりません。
それでも、判断の精度が少しずつ上がったり、関係性の築き方が変わったり、想定できる範囲が広がったりすることはあります。 そうした目に見えない変化の積み重ねによって、結果としてプロジェクトは前に進んでいきます。
誰か一人が正解を持っているわけではありませんし、どこかに最初から用意された答えがあるわけでもありません。
だからこそ、プロジェクトでは、その時点で考えられる最善を選びながら進めていくことが大切です。
そして、選んだことが本当に正しかったのかを後から検証し、そこで得た気づきを次の判断材料にしながら進めていくうちに、少しずつ自分たちなりの進め方が見えてくるのだと思います。