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収支計画書を社内に公開することで得られた変化

これまで収支計画表そのものは作っていたものの、その詳細な内容を社内に公開することはしていませんでした。

売上や利益率などの一部の数字は共有していましたが、利益目標や経費、資金繰りといった経営に関わる数字まで含めて見せることには、どこか抵抗がありまして。

会社が抱えている不安や課題まで見えてしまう気がしていたからです(本当は見えるべきなんでしょうが)。

色々考えた結果、あまりにも生々しい数字は伏せつつも、会社全体の状況が分かるレベルまで情報を整理し社内で公開してみることにしました。

結果として、これは想像以上によい取り組みだったと思っています。

一番大きかったのは、感覚ではなく数字を起点に会話ができるようになったことですね。

「なんとなく頑張ろう」ではなく、「この数字を達成するために何をするべきか」という話が自然とできるようになりました。

会社の状況を共通認識として持てるようになったことで、意思決定の質も少しずつ変わり始めています。

まだ始めたばかりではありますが、収支計画書を公開してみて実際に感じたことを書き残してみようと思います。

まずは数字をひとつの場所に集めてみた

今回最初に取り組んだのは、会社の数字をひとつの場所で見られるようにすることでした。

売上高、必要経費、目標売上までの進捗、営業利益、利益率、月次P/Lの推移、利益率の推移、売上構成比、事業部ごとの構成比などなど…。

見るべきところはいっぱいあります。

これまで複数のシートや資料に散らばっていた情報を集約し、「経営ダッシュボード」として整理しました。

単純に数字を並べただけだと分かりにくいので、できるだけ直感的に状況が理解できるように、グラフや構成比も含めて見た目を整え「今、会社がどんな状態なのか」が一目で分かるようにしてみました。

実装については大部分をCodex先生に助けてもらいましたが、なかなか満足度の高いものができたと思っています。

「実績シート」の所定箇所に数字を入力するだけでダッシュボードが自動更新される仕組みにしたため、日々の運用も全く負担になりません。いい感じ。

これまでも月次の売上は共有してはいたのですが、売上だけを見ても会社全体の状況はなかなか見えてこないような実感がありました。

利益率ってどれぐらいなの?目標との差はどれくらいなの?売り上げ構成比ってどうなってるの?などの情報まで含めて可視化したことで、数字を「点」ではなく「全体像」として捉えられるようになった感覚があります。

最近は、「ここであとこれだけ売上が増えたらどうなるかな」とか「この案件が取れなかったら利益率はどう変わるだろうか…」といったことを考えながら眺めるのがちょっとした楽しみになっています。

経営シミュレーションを肴に酒を飲むのが趣味になりつつあります。

あえてキャッシュも共有

今回の取り組みの中で、最も賛否が分かれそうなのが「キャッシュの公開」です。

もちろん、通帳残高をそのまま見せているというわけではありません。

しかし、会社としてどれくらいの資金があり、今後どのように推移していくのかという「すっごく大まかな状況」だけは共有することにしました。

経営者の方と話していると「キャッシュだけは見せていない」という意見もけっこう聞きます。

その考え方もよく分かります。

実際、資金繰りは経営の根幹ですし、必要以上に不安を与えてしまう可能性もあります。が、あえて公開することにしました。

理由はシンプル。

「経営状態をみんなで理解し、みんなで考えられる状態を作りたかったため」です。

小さい会社だからこそ、会社の状況を経営者だけが把握するのではなく、みんなで考えたいなと。今後メンバーが増えたら公開範囲は限定的なものにする可能性はありますね。

これまでも利益や業績については共有していましたが、それはあくまで結果や試算の数字でした。

一方でキャッシュは、会社のHPそのものです。無くなったら終了してしまいます。ゲームオーバーです。

その「無くなったら死ぬ」という感覚は、利益の数字だけを見ていてもなかなか実感できません。

実際に公開してみると、社内の会話にも変化が生まれました。

「この時期までにこれくらいの資金を確保しておいたほうがよさそうだね。」

とか、

「この月には税金の支払いがあるので、その分は残しておかないとダメだね。税金高いね。」

とか。

そんな話が自然と出てくるようになったのは嬉しいところです。

経営者からすると当たり前に考えていることでも、数字が見えなければメンバーに分かるわけがありません。

いたずらに危機感を煽りたいわけではありませんが、ただ、会社がどのようなお金の流れで動いているのかを理解することは組織として非常に大切なことだと思っています。

キャッシュを公開したことで、会社のお金を「誰かのお金」ではなく、「自分たちが守り育てるもの」として捉えてもらえるようになった気がしています。

もっと気を引き締めなくては…

「数字を前提にすると問いの質が変わること」に気づいた

先ほども触れましたが、社内の会話が変わりました。それも結構びっくりするレベルで。

数字を公開する前も、もちろん会社について話し合う機会はありました。

ただ、今思えばその多くは感覚的な議論だったように思います。

例えば、「もっと頑張ったほうがいいよね!」「営業を強化したほうがいいよね!」「売り上げ上げたいよね!」みたいな。

ものすごくアホっぽいですね。

まあ、どれも間違ってはいません。

具体的な数字がない状態では、どうしても抽象的な会話になりがちなものです。

が、数字が見えるようになると議論の内容がここまで変わるのかとびっくり。

「この利益率を実現するには、何をしなければいけないのか」「この数字を改善するためには、何を増やすべきなのか」「逆に、何をやらないと決めるべきなのか」「この部分削りませんか」とかとか、なんだかブルーオーシャン戦略っぽい話が自然に出てくるようになりました。

目標が数字として見えているからこそ、そのための行動にまで話が落ちていくんでしょうね。

これは想像以上に大きな変化でした。

経営というと、特別な才能や経験が必要なもののように感じることがあります。

しかし実際には、数字を見て、仮説を立てて、行動を決めるという繰り返しの側面が大きいのだと思います。

PDCAってやつですね。本当にPDCAの重要性を感じる日々です。

そういう意味では、いわゆる「経営目線」と呼ばれるものも、数字と向き合うことで少しずつ身についていくものなのかもしれません。

そして同時に反省もありましたね。

これまで私たちは、定量的な数字を十分に共有しないまま、多くの意思決定をしてきました。もちろん、それでも会社はなんだかんだで成長してきていたんです。

しかし、もしもっと早い段階から数字を共通言語として持てていたら、もっと良い意思決定ができていた場面もあったのではないかと思います。

もちろん数字だけで経営はできませんし、感覚や経験、直感も大切にしたいところです。しかし数字があることで、その感覚や直感に根拠が生まれます。

そして何より、全員が同じ景色を見ながら議論できるようになるのは嬉しいですね。数字を前提に考える文化が芽を出してきたのは素敵ですね。

月次決算が「提出物」から「経営ツール」に

実は、月次決算そのものは以前から行っていました。

税理士さんに作成していただき、毎月数字を確認する機会を設けてはいたものの、ただ、正直なところ、どこか他人事だったように思います。生々しい数字が入っていることもあり社員に共有もしていませんでした。

もちろん内容は見ているんですが、資料を見ながら「では来月どう動こうか」と具体まで考えるところまでなかなか至りませんでした。

理由は単純でございまして、頭の弱い私には「The 税務」的な内容は少し難しかったのです。

税務の観点から見れば必要な数字ばかりなんですが、結局何の数字をどうすればいいんだっけ?となってしまっていたんです。

言い換えると、認知負荷が高すぎたんですね。

僕の経営力や理解力の無さは一旦置いておいて、自分たちのような比較的シンプルな事業構造の会社にとっては、まず見るべき数字をもっと絞ったほうが良かったんでしょうね。

色々な指標があると行動しにくいものです。

なので今回作成した経営ダッシュボードはだいぶ項目を限定しました。「自己資本比率」とか「取得価額」とか「償却額計算の対象となる期末現在の帳簿記載金額」とか書いてないし。

シンプルに、今どの位置にいて、目標との差はどれくらいで、このまま進むとどう着地するのか、今何をすべきなのかを分かるようにしたかったんです。

数字を見ることが目的になってしまうと経営はできません。数字を見て行動を決めることが目的なんだと改めて感じています。

もちろん、経営ダッシュボードだけでは「ちゃんとした経営」には不十分なことは理解しています。

税務や財務を正しく理解するためには、決算書や月次資料もしっかり確認する必要があります。ただ、経営ダッシュボードと月次決算書はそれぞれ役割が違うと思うんです。

月次決算書が会社の状態を正確に記録するものであるならば、経営ダッシュボードは次の一手を考えるための資料とでも言えばいいのか。

今後は両者をうまく組み合わせながら、より分かりやすく、より実践的な経営の仕組みに育てていきたいと思っています。

制作会社だからこそ、数字で考えられる組織でありたい

私たちはWebサイトを作ったり、取材をして記事を書いたりする仕事をしています。

世の中には数字との距離が近い業界もありますが、私たちの仕事は比較的そうではないこともしばしば。だからこそ、この業界には感覚やセンス、経験や人脈を特に重視する人も少なくありません。

それ自体は素晴らしいことだと思います。

良い企画や良いデザイン、良い文章、いい仕事は数字だけでは生み出せないからです。

しかし一方で、私たちは数字から目を背けてはいけないとも思っています。なぜなら、お客様が事業を行う以上、その先には必ず経営があるからです。

課題の種類もたくさんです。

採用を増やしたい。問い合わせを増やしたい。ブランドを育てたい。認知を広げたい。などなど、そうした目的の先には必ず事業成果があり、その成果は最終的に数字として現れます。

だからこそ、私たち自身が数字で考えられなければ、お客様の経営課題に本当の意味で向き合うことはできないと思っています。

「なんとなく良さそうだからやりましょう」ではなく、「この施策にはどんな効果が期待できるのか」「どの数字を改善するために取り組むのか」「優先順位は本当に正しいのか」そうした会話ができる会社でありたいと思っています。

感覚を数字で裏付け、数字を感覚で疑う感じ。どちらか一方ではなく、その両方を行き来できることがこれからの制作会社には求められるのかなと考えています。

今回、収支計画を公開したことで、会社全体の数字力がちょっと上がりました。まだまだ改善の余地はありますし、ダッシュボードもこれから何度も作り直していくと思います。

気が遠くなるなあ…

それでも、数字を共通言語として話せるようになったことは間違いなく前進でした。

経営ダッシュボードも、収支計画も、月次決算も、それ自体が目的ではなく、より良い意思決定をするための手段です。

「数字を見て考え、考えたことを行動に移し、そして結果をまた数字で振り返る」というそんなサイクルを愚直に回しながら、少しずつでも骨太な組織になっていけたらと思っています。

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Kentaro Matsuoka