最近、会社経営において本当に大事なことは何なのかを考える機会が増えました(今更感はありますが)。
これまで何年も「売上を上げること」ばかりに意識を向けてきましたが、それが本当に一番のイシューなのかな?と感じるようになったのです。
売上は会社を動かすガソリンのようなものです。もちろん必要です。
しかし、それ以上に大切なのは「正しく、長く生き残るための意識」であり「その手段」ではないかと思っています。
売上を上げることは一つの手段
会社におけるあらゆる活動は、一見すると売上や利益を上げるために存在しているように見えます。
けれど、実際の本質はそこにはないと思うのです。
私が大事にしているのは「中長期での長期生存性をいかに高めるか」。
簡単にいえば消えないことが重要であり、生存領域を確保することが活動の本質なのではないかと感じます。売上も大事ですが、売上を作るために会社の寿命を縮めるようなことはしたくありません。
会社の価値は「どれだけ長く、環境の変化に適応しながら存在し続けられるか」で決まります。
売上や利益はその結果として生まれるものであり、目的そのものではありません。売上を上げる、ある種「勝つこと」は、生き残るための一手段に過ぎないと思うのです。
戦略とは「戦いに勝つ方法」を考えることではなく、「戦わずに済む方法」を見つけることです。古くから兵法にも記されているように、本当に強い者とは、戦わずして勝つ者のことを指します。
どの戦場を避けるか、どこに自分たちの生存領域を築くか。それを見極めることこそが、現代における戦略の本質だと感じています。
そして、その戦略を駆使して「生き残る」ことこそが会社という存在にとって最も重要なのだと、最近はふんわり思っています。
大事なのは「長く生きる会社」のための意思決定
これまでの経営を振り返ると「生き残るための戦略」について真剣に考えることは意外と少なかったように思います。
これまでの私は、長い間とにかく売上のトップラインを伸ばすことに集中してきました。数字が上がれば成果が出ているように見えるし、会社も前に進んでいる気がしていたからです。
けれど、その思考はとても近視眼的でした。
世の中には「一見うまくいきそうな話」や「耳障りのいいプロジェクト」がたくさんあります。予算が大きくて魅力的に見えるけれどなんだか胡散臭い案件、熱意は素晴らしいけれど利益構造が成り立っていない案件…。
しかし、そのどれもが「短期的には潤うかもしれないが、長期的に見れば会社を疲弊させそう」ものばかりだったように思えます。
経験上「なんとなく危ないかも」という違和感は、たいてい外れません。君子危うきに近寄らず、という言葉は本質を突いていると思います。
ただし、感覚だけで判断するのもまた危険です。
だからこそ、私はできる限り丁寧にお話を伺い、その仕事が本当に「会社が目指す未来」に繋がるのかを考えるようにしています。
もし、弊社の理念や方向性に重なるものであれば、喜んで挑戦したいと思います。
一方で、短期的な利益だけを目的としたお仕事であれば、どれだけ条件がよくても、一歩引いて見極めることを大事にしています。
早い話、会社が生き残るために適さないと感じた際は、金額インパクトは一切関係なくお断りしています。おそらく何億積まれても私は断るでしょうね(多分)。
しかし、この仕事はきっと色々な方のお役に立てる。この仕事はきっと会社の未来のためになる感じた仕事は利益度外視でお引き受けすることもあります。
生き残るための戦略とは、戦わないことだけでなく、「どの戦場を選ばないか」を決めることでもあります。
この意思決定の連続こそが、会社の未来を形づくっていくのだと思います。
長く生きるために
多くの会社が「どう生き残るか」に必死です。
もちろん、私たちもその中のひとつです。
経営の世界では、短期間でのイグジットやスケールを目指す動きも少なくありません。それはそれでひとつの美しい生き方だと思います。
しかし、私たちは少し違う道を歩みたいと思っています。
私たちが大切にしたいのは「短期間で稼ぐ」ことではなく「長く続けること」。
お客様や仲間、そして自分たち自身と、できるだけ長い時間をかけて関係を育てたいのです。一時的な売上や話題よりも「この会社があってよかった」と思ってもらえる存在でありたいのです。
もちろん、売上を上げることは大切です。とても大切です。
しかし「売上のために生きる」という発想のみでは、本質的な信頼や継続的な価値提供は難しいと感じています。
私たちが目指すのは、長期での生存戦略です。
それは、会社をただ存続させるという意味ではなく、時代や環境が変わっても、自分たちらしい価値を提供し続けられる状態をつくること。
そのためには、目先の成果よりも「体力」をつけることが重要だと思っています。
財務的な安定ももちろんですが、もっと広い意味での体力。たとえば、人との信頼関係や、柔軟に変化できる組織文化、そして「続けたいと思える仕事」を続けられる仕組み。
会社を「長く生きるもの」にするというのは、結局のところ「人が無理なく働き続けられる環境」をつくることでもあるのだと思います。
なかなか難しいですが。
でも、その延長線上にこそ私たちが描く未来があるのだと、今は感じています。