伝統への敬意を前提とした「異端」
ブランド名にもある「Heretic」は直訳すると「異端者」。正統とは異なる思想や信仰を持つ者、あるいは社会的な伝統や権威に反発する者を指すとても強い言葉です。
しかし、このパルファムの基礎になっている「異端」の概念は、一般的な解釈とは少し異なるかもしれません。
例えば、アロマセラピーやアーユルヴェーダの思想を取り入れる一見すると挑戦的な試みは、フランスのグラースに代表される伝統的な調香技術と確かな知識体系によって支えられています。
その名に「異端」を冠しながらも、大切に守り抜かれてきた伝統や基本を無視して一時的な潮流に迎合する安易な香水と決別する、そんな調香師兼創業者のダグラス・リトル氏の強い意志を感じます。
時間と共に色彩を帯びていく
肌に乗せた瞬間、鼻腔をくすぐるシダーとホワイトアンバー、そしてピンクペッパーの印象は、鮮烈でありながらもどこか温かみを感じます。
しばらく経つと、ジャスミンサンバックとバルサムの層が顔を出し始め、セピア色だった世界に少しずつ色が滲み出てくるかのよう。少し不思議な感覚です。
時間の経過とともに徐々に色彩を帯び、艶めきながらも、最後はベースノートのラブダナムとパチョリ、ムスク、ベチバーが穏やかに締めくくります。
「汚れたスエード」と形容するほど攻撃的ではなく、むしろどこか懐かしさと優しさを感じる、そんな芳香がとても印象的でした。
結びに。感謝の気持ちを込めて
実はこの香水、弊社が2期目を終えた記念の贈り物でした。
自分の大好きな香水をプレゼントしてもらったことへの喜び(本当にありがとうございます)と、3期目へ向けた新たな挑戦への期待と不安が入り混じる瞬間を今でも思い出します。
香水とは不思議なもので、時間を超えて記憶を呼び覚ます力を持っています。瓶を開けるたび、喜びや決意が鮮やかによみがえるものです…。
そしてあれよあれよと気が付けば、3期目も残すところ1クオーター。
「異端」という言葉は、弊社の理念を表現する上で少し強すぎるかもしれませんが、確かな基礎を土台として、新たな価値を生み出していけるように。
4期目に向け、これからも直向きに努力を重ねて行きたいと思います。