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数字でたどる、神奈川・横浜のクラフトビール

香りや苦味、色、アルコール度数など、造り手ごとの個性を楽しめるクラフトビール。

近年は、スーパーマーケットやコンビニ、飲食店でも見かける機会が増えましたね。旅行先のブルワリーを訪ねたり、その土地で造られたビールを地域の料理と一緒に味わったりと、一杯を楽しむ方法も広がっています。

自分もビールが大好きで、普段からクラフトビールのコミュニティに顔を出しています。造り手によって味わいが異なるのはもちろん、ビールが生まれた土地や、ラベルに込められた物語を知ることも楽しみのひとつです。

神奈川県にはブルワリーが多い印象を受けていたんですが、実際に調べてみると、神奈川県のブルワリー数は東京都に次いで全国2位。さらに、横浜市内には約17のブルワリーが拠点を置いているそうです。

今回は、自分の好きなクラフトビールをテーマに、全国で小規模なビール造りが広がった背景と、神奈川・横浜にブルワリーが集まる理由を、さまざまな数字から見ていきます。

6場から428場へ、数字でたどる日本の地ビール史

日本のクラフトビールの広がりと主な出来事

日本で小規模なビール醸造所が増える大きなきっかけとなったのが、1994年の酒税法改正です。

それ以前、ビールの製造免許を取得するには、年間2,000kL以上を製造することが基準とされていました。しかし、1994年4月、最低製造数量基準が年間60kLへと大幅に引き下げられます。

従来の基準と比べると、必要とされる製造数量は約97%減少しました。これにより、大規模な生産設備を持たない地域の事業者にも、ビール造りへ参入する道が開かれました。

2,000kLから60kLですから、かなり思い切った規制緩和だったことが分かります。現在では小さなブルワリーも身近な存在になっていますが、その始まりには、こうした制度の大きな変化があったんですね。

全国の地ビール製造免許場数の推移(1994〜2023年度)

国税庁が公表する「地ビール製造免許場数」は、制度が改正された1994年度には6場でした。その後、1995年度には24場、1996年度には103場、1997年度には209場へと急増します。

1990年代後半には全国各地で地ビールブームが起こり、地域の観光施設や飲食店などが相次いでビール造りへ参入しました。

2023年度の地ビール製造免許場数は428場です。1994年度の6場と比べると、約71倍に増えています。

ただし、その間、免許場数が右肩上がりに増え続けてきたわけではありません。

1999年度の264場をピークに、その後は減少傾向が続きました。品質や販路、収益性などの課題から撤退する事業者も現れ、2013年度には179場まで減少しています。

一度盛り上がったものの、造れば売れるほど単純ではなかったのでしょう。ビールの品質を保ちながら、継続的に販売し、事業として成り立たせる難しさが数字にも表れています。

その後は、クラフトビールへの関心の高まりや醸造技術の向上、販路の多様化などを背景に、免許場数が再び増加していきました。

なお、2017年度の184場から2018年度の395場への大幅な増加は、酒税法改正によってビールの定義が拡大されたことが大きな要因です。それまで発泡酒の製造免許で商品を造っていた事業者の一部に、ビール製造免許が付与されたことによる制度上の影響も含まれています。

神奈川県のビール製造免許場数は41場で全国2位

都道府県別にみるビール製造免許場数

クラフトビールの話に入る前に、まずは神奈川県にどれほどのビール製造拠点が集まっているのかを見てみましょう。

ここで取り上げるのは、国税庁が公表している「ビール製造免許場数」です。これはクラフトブルワリーだけでなく、大手ビールメーカーの工場や試験製造免許を含む、酒税法上のビール製造場を数えたものです。

国税庁の2024年度統計によると、2025年3月31日時点のビール製造免許場数は、全国で550場あります。

都道府県別では東京都が58場で最も多く、神奈川県は41場で全国2位。北海道の34場、静岡県の25場、大阪府と兵庫県の各21場が続きます。

神奈川県にブルワリーが多い印象はありましたが、全国2位と聞くと、あらためてその存在感の大きさを感じます。

神奈川県の41場は、全国550場の約7.5%に相当します。単純に計算すると、全国のビール製造免許場のおよそ13場に1場が神奈川県にあることになります。

【都道府県別ビール製造免許場数】

順位 都道府県 免許場数
1 東京都 58
2 神奈川県 41
3 北海道 34
4 静岡県 25
5 大阪府 21
5 兵庫県 21
7 千葉県 17
8 沖縄県 16
9 埼玉県 15
9 愛知県 15
9 京都府 15
12 長野県 14
13 茨城県 11
13 栃木県 11
13 宮城県 11
13 新潟県 11
13 山梨県 11
13 岡山県 11
13 徳島県 11
20 岩手県 10
20 群馬県 10
20 三重県 10
23 富山県 9
23 滋賀県 9
23 和歌山県 9
23 福岡県 9
27 青森県 8
27 福島県 8
27 石川県 8
27 奈良県 8
27 鳥取県 8
27 宮崎県 8
33 秋田県 6
33 香川県 6
33 愛媛県 6
33 大分県 6
33 鹿児島県 6
38 島根県 5
38 広島県 5
38 山口県 5
41 山形県 4
41 福井県 4
41 岐阜県 4
41 熊本県 4
45 高知県 3
46 長崎県 2
47 佐賀県 1

神奈川県には67のブルワリー、全国でも有数のクラフトビール県

都道府県別にみるクラフトビール・地ビール・地発泡酒醸造所数

きた産業株式会社が公表している「クラフトビール全国醸造所リスト」によると、2025年12月末時点で、全国には998か所のクラフトビール・地ビール・地発泡酒醸造所があります。

この調査データには、ビール製造免許を持つ醸造所だけでなく、発泡酒製造免許でクラフトビールを造る事業者なども含まれています。

都道府県別では、東京都が133か所で最も多く、神奈川県は67か所で全国2位です。北海道の50か所、長野県の43か所、大阪府の42か所が続きます。

【都道府県別の醸造所数】

順位 都道府県 醸造所数
1 東京都 133
2 神奈川県 67
3 北海道 50
4 長野県 43
5 大阪府 42
6 千葉県 38
7 静岡県 35
8 兵庫県 34
9 埼玉県 33
10 愛知県 29
11 福岡県 26
12 山梨県 24
12 京都府 24
12 沖縄県 24
15 新潟県 23
16 岩手県 19
17 広島県 18
18 茨城県 17
18 群馬県 17
18 岡山県 17
18 鹿児島県 17
22 宮城県 16
23 栃木県 15
23 滋賀県 15
25 島根県 14
26 福島県 13
26 香川県 13
28 岐阜県 12
28 奈良県 12
28 愛媛県 12
31 三重県 11
31 山口県 11
31 徳島県 11
31 宮崎県 11
35 富山県 10
35 和歌山県 10
37 秋田県 9
37 山形県 9
37 鳥取県 9
37 大分県 9
37 熊本県 9
42 青森県 8
42 石川県 8
44 高知県 6
45 福井県 5
45 長崎県 5
47 佐賀県 4

神奈川県の67か所は、全国998か所の約6.7%に相当します。単純に計算すると、全国のブルワリーのおよそ15か所に1か所が神奈川県にあることになります。

【地域別の醸造所数】

地域別のクラフトビール・地ビール・地発泡酒醸造所数

さらに、都道府県別の醸造所数を地域ごとに集計してみると、最も多かったのは関東でした。

山梨県を含む関東8都県には、合計344か所のブルワリーがあります。東京都の133か所、神奈川県の67か所を中心に、千葉県が38か所、埼玉県が33か所と続きます。

関東だけで、全国のブルワリーの3分の1以上を占めていることが分かります。

2番目に多いのは近畿の137か所で、九州・沖縄の105か所、東海の87か所が続きます。

人口や飲食店が集中する大都市圏では、造ったビールを消費者へ届けやすく、醸造所と飲食店を併設するブルーパブ型の事業も展開しやすいと考えられます。

一方で、都道府県別の上位には、北海道や長野県、静岡県、沖縄県など、観光資源や地域の食文化を生かしやすい地域も入っています。

大きな消費市場を持つ都市部と、その土地ならではの食や観光を楽しめる地域が、日本のクラフトビールの広がりを支えているようです。

横浜にブルワリーが集まる理由

横浜は、「日本のビール産業発祥の地」として知られています。

1869年には横浜山手46番地に「ジャパン・ヨコハマ・ブルワリー」が開設され、翌1870年にはウィリアム・コープランドが山手で「スプリング・ヴァレー・ブルワリー」を創業しました。その跡地は現在、横浜市の「ビール製造発祥の地」として登録されています。

こうした歴史を持つ横浜市には、現在も神奈川県内で最も多くのブルワリーが集まっています。

横浜市に集積している理由について考えてみました。

多くの人に直接届けられる市場がある

クラフトブルワリーにとって重要なのは、造ったビールを飲んでくれる人が身近にいることです。

大手メーカーのように大量の商品を全国へ流通させるのではなく、醸造所に併設したタップルームやレストラン、近隣の飲食店、地域イベントなどを通じて販売するブルワリーも少なくありません。

また横浜市には、地域住民だけでなく、市外からも多くの方が訪れます。

2025年の観光入込客数は3,915万人、観光消費額は5,077億円となり、いずれも2009年の統計算出開始以降で過去最高を記録しました。

市内には、横浜駅やみなとみらい、関内、馬車道、山下公園、横浜中華街など、観光客や会社員、住民が行き交うエリアがあります。

こうした大きな消費市場が身近にあることは、醸造所で造ったビールをその場で提供するブルーパブ型の事業にとって、相性のよい環境だといえます。

地域の食や観光を生かしやすい

クラフトビールの魅力は、缶やびんに詰められた商品だけにあるわけではありません。

造りたてのビールを醸造所で飲んだり、複数の種類を少量ずつ飲み比べたり、地域の料理と一緒に味わったり、醸造設備を見学したりすることも、クラフトビールならではの楽しみ方です。

神奈川県内には、横浜や川崎のような大都市がある一方、湘南や鎌倉、箱根、小田原、三浦半島、丹沢など、自然や観光資源に恵まれた地域もあります。

海や山の景観に加え、農産物や水産物、果物、茶など、それぞれの地域の特色をビール造りや飲食体験に生かせることも、神奈川県ならではの強みです。

また、横浜には飲食店やホテル、商業施設、港沿いの観光施設など、ビールを食や景観と組み合わせて楽しめる場所がそろっています。

同じ一杯でも、港の景色を眺めながら飲むのか、醸造設備の隣で飲むのかによって、受け取る印象は大きく変わります。

クラフトビールを飲むこと自体が、外食や観光の目的になり得る点も、横浜でブルワリーを展開する魅力のひとつといえるでしょう。

ブルワリー同士の連携が街の文化を育てる

ブルワリーが地域に集まると、それぞれが単独で営業するだけでなく、造り手同士が連携する動きも生まれます。

2025年11月には、横浜に拠点を置く11のブルワリーを中心に、「Yokohamaクラフトビールアソシエーション」が発足しました。

横浜市や横浜市観光協会、横浜商工会議所、横浜ハンマーヘッドなどもサポーターとして参画し、クラフトビールマップの制作やブルワリー同士の勉強会、コラボ商品の開発、イベントの開催などを通じて、「クラフトビールといえば横浜」と呼ばれる街づくりを進めています。

ブルワリーが集まることで、ひとつの醸造所だけでは実現しにくい企画や情報発信にも取り組みやすくなりますし、飲食店や観光施設との連携が広がれば、複数のブルワリーを巡ったりと街全体を楽しむ新たな体験も生まれるでしょう。

消費者にとっても、目的のビールを味わうだけでなく、ブルワリーを巡りながら街を歩くこと自体が、横浜を訪れる楽しみのひとつになるはずです。

神奈川県には全国でも有数のブルワリーが集まり、その中心には横浜があります。今後も地域特性を生かしながらクラフトビール文化を育てていってほしいですね。

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Kazuya Nakagawa