プロジェクトを進める上で最も重要なことは、クライアントが求めていた結果を達成できたかどうかです。
どれだけ完成度の高い成果物を制作したとしても、「イメージしていたのと違った」と言われてしまえば、そのプロジェクトは成功とは言えません。制作者側としては手応えがあったとしても、それがクライアントの課題解決につながっていなければ、結果として自己満足に終わってしまいます。
このように成果物の完成度と、クライアントの評価や満足度は必ずしも一致するとは限りません。そこで重要になってくるのが、顧客要望への理解です。
クライアントが何を課題として捉え、どのような変化を期待しているのか。その前提を理解しないままプロジェクトが進んでしまうと、途中での修正や手戻りが増え結果として時間やコストのロスにつながります。場合によっては、信頼関係そのものを損ねてしまうケースもあるでしょう。
こうした問題は、特別な失敗例というより、クライアントワークにおいて繰り返し起こりがちなものです。
今回は、プロジェクトの途中で生じやすい「認識のズレ」について、その背景と、ズレを最小限に抑えるために意識しておきたい点について整理していきます。
認識のズレの原因は、ゴールが共有されていないこと
認識のズレが起こる背景には、ゴール設定が曖昧なままプロジェクトが走り出してしまっているケースが多くあります。
何をもって成功とするのか。どの状態になればゴールと言えるのか。
こうした点が明確でないまま進行すると、プロジェクトに関わるメンバーそれぞれの解釈に差が生まれ、認識のズレは少しずつ広がっていきます。
目指すべきゴールが共有されていなければ、途中でズレが生じるのは、むしろ自然なことだと言えるでしょう。
また、クライアントとのコミュニケーションだけでなく、社内での伝え方もプロジェクトの質に大きく影響します。
プロジェクトをスタートから最後まで一人で担当するケースは少なく、多くの場合、複数のメンバーが関わりながら進行します。
そのため社内においても、このプロジェクトは何を目的としているのか、どの成果を最優先すべきなのかといった前提を共通認識として持っておくことが欠かせません。
例えば、ライターのAさんとBさんが関わる記事制作のプロジェクトを考えてみます。
Aさんはアクセス数を増やすことを目的に取り組んでいます。一方でBさんは問い合わせを増やすことを目的にしています。
この場合、同じ「記事制作」という業務であっても、重視するポイントは大きく異なります。
アクセス重視であれば、検索ボリュームの大きいキーワード選定や情報の網羅性が重要です。一方、問い合わせ重視であれば、導線設計や訴求内容、CTAの置き方が成果を左右します。
このように目指すべき目的が揃っていなければ、アウトプットの方向性にズレが生じてしまいます。
認識のズレを防ぐために、最初に意識したいこと
こうしたズレは、プロジェクトの途中で突然発生するものではありません。ほとんどの場合、最初の設計段階に問題があり、それが時間の経過とともに徐々に大きくなっていきます。
では、こうしたズレを防ぐためには、何が必要なのでしょうか。
重要なのは、進行管理やスケジュール以前に、「共通認識をつくるためのプロセス」を意識的に設けることだと考えています。
プロジェクト開始時点では、何をやるか、いつまでにやるかといった点に意識が向きがちです。しかし、本来優先すべきなのは、「なぜそれをやるのか」「何が変われば成功と言えるのか」という前提条件の共有です。
例えば、「記事コンテンツを制作する」という依頼ひとつを取っても、その目的はさまざまです。認知を広げたい、比較検討の土俵に立ちたい、最終的に問い合わせにつなげたいといった意図が含まれています。
それらが言語化されないまま進むと、各担当者がそれぞれの解釈で仕事を進めることになります。
ズレを防ぐためには、目的そのものを細かく分解し、プロジェクトに関わるメンバー全員が、同じ言葉で捉えられる状態をつくることが大切です。
「アクセスを増やす」「成果を出す」といった抽象的な表現ではなく、どの指標がどう変わることを目指すのかといったレベルまで落とし込むことが大切です。
意識し続けることが、ズレを防ぐ仕組みになる
プロジェクトのゴールは、一度共有すれば終わりというものではありません。
プロジェクトは進行するにつれて状況が変わり、当初は見えていなかった課題が浮かび上がってくることもあります。そうした変化に対して、都度立ち返ることのできる「軸」がなければ、判断は場当たり的になり、再び認識のズレが生じてしまいます。
多くの場合、ズレが起きやすいのは「何かを決めた直後」ではなく、「決めたつもりになっている状態が続いたとき」です。特に注意が必要なのは、プロジェクトが動き出してしばらく経ち、作業がルーティン化してきた段階です。
プロジェクトの初期段階では、要件確認や方向性のすり合わせに時間をかけるため、関係者の意識も揃いやすくなります。しかし、制作や運用が本格化するにつれて、それぞれの考えや判断基準が少しずつ出始め、ズレは少しづつ蓄積していきます。
ここまで述べてきたことはシンプルですが、日々の業務の中で継続して実践するのは簡単なことではありません。また、一人だけが意識していても意味がなく、チーム全体で意識することが重要です。
こうした前提を保ち続けられるかどうかが、結果としてプロジェクトの成果の差に直結していくのだと思います。