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野球のようで野球じゃない。新たなカルチャーとして注目されるBaseball5

新たなスポーツが誕生し、普及に向け動き出しています。

その名も「Baseball5(ベースボールファイブ)」。その名前から野球を連想しますが、野球やソフトボールとは似て非なる競技です。

少子化などを理由にスポーツの競技人口が減少傾向にありますが、ベースボール5はどのような位置付けで誕生したのでしょうか。

新カルチャーとして注目を集めるベースボール5について触れていきます。

コロナ禍が収束し、プロ野球の観客動員数が回復傾向に

数あるプロスポーツの中でも、プロ野球は大谷翔平選手の輝かしい活躍の影響も手伝い、2024年度のセ・パ公式戦の入場者数が過去最高を更新しました。

過去10年間の、日本のプロ野球の観客動員数推移は以下の通りです。

両リーグ合計 セ・リーグ パ・リーグ
年度 観客動員数
2014年 22,859,351人 12,616,873人 10,242,478人
2015年 24,236,920人 13,510,900人 10,726,020人
2016年 24,981,514人 13,848,988人 11,132,526人
2017年 25,139,463人 14,024,019人 11,115,444人
2018年 25,550,719人 14,235,573人 11,315,146人
2019年 26,536,962人 14,867,071人 11,669,891人
2020年 4,823,578人 2,754,626人 2,068,952人
2021年 7,840,773人 4,533,258人 3,307,515人
2022年 21,071,180人 12,107,163人 8,964,017人
2023年 25,070,169人 14,119,723人 10,950,446人
2024年 26,586,977人 14,581,514人 12,005,463人

観客動員数は回復傾向にある一方、これからの野球界を担う世代の野球離れが囁かれています。

中学校を対象とした軟式野球部に所属する部員数は、2011年度では280,917人。その後は軟式野球の人口は減少し、2024年度の部員数は129,805人まで減少しています。

また高校を対象とした硬式野球部に所属する部員数も、全盛期は約17万人を記録していましたが、2024年度では127,031人と野球離れが顕著に。

これは、少子化による影響も考えられますが、他のスポーツに競技人口が取られているのも事実です。

そもそも野球をできる場所が少ないことも、野球離れを深刻化させている原因と言えるでしょう。

以前までは公園でも子供たちが野球をしている風景が当たり前でしたが、近年では野球禁止やキャッチボール禁止などの立て看板が目立つようになりました。

これは他の利用者への安全性などを配慮したものではありますが、子供たちが野球に接することができない状況を作り出してしまった原因としても考えられます。

新たなカルチャーとして注目を集めるベースボール5の登場

ベースボール5は、野球やソフトボールを原型として考案されたアーバンスポーツです。

キューバ発祥の「クワトロ・エスキーナス(Cuatro Esquinas)」という手打ち野球から着想し、世界野球ソフトボール連盟(WBSC)が2017年に発表し、公式競技化されました。

野球の設備や道具が不足している地域でも野球やソフトボールというダイヤモンドスポーツとコンセプトを理解してもらうための普及活動としてプレーされてきたのです。

2026年ユースオリンピックの追加種目にも認定され、新たなアーバンスポーツとしての価値が加わり急速な世界への普及をみせているスポーツです。

グローブやバットなどの道具は一切使用せず、ゴムボール1つあればどこでもプレーすることができる点が特徴的。狭いスペースで楽しむことができ、野球やソフトボールにはないスピーディかつ、ダイナミックなスポーツです。

この手軽さから世界70カ国以上にまで普及が拡大し、プレーされています。

ベースボール5は、男女混合でスピーディかつダイナミックな試合が魅力

ベースボール5は男女混合競技で、先発5人、控え3人の最大8人で1チームを構成。ディフェンス時に男女各2名以上が出場しなければいけません。

また守備の陣形は「ファースト」「セカンド」「ショート」「サード」と、ベースボール5特有の「ミットフィルダー」の守備位置が存在します。

ミッドフィルダーはショートとセカンドの中間の守備位置で、手打ちのためピッチャーとキャッチャーは存在しません。

試合は5イニング制で、3試合勝ちあがり制を採用。試合時間は、約20~60分とスピーディでダイナミックなゲームを楽しむことができます。

ベースボール5のフィールドは18m×18mの正方形で、塁間は13m。打球がフェンスを越えたり、ノーバウンドで当たったりするとアウトの判定となり、本塁打がない点もポイントのひとつ。

野球やソフトボールなど広い環境は不要で、体育館や街中など室内・屋外関係なくプレー可能です。その他にもベースボール5特有のルールがありますが、基本的には野球と同じルールです。

実際に観戦したことで伝わるベースボール5の魅力

「第2回 Baseball5日本選手権」が行われたアリーナ立川立飛

振袖や袴、スーツを着こなした新成人で街が賑わう2025年1月13日に、東京都立川市のアリーナ立川立飛で「第2回 Baseball5日本選手権」が開催されました。

会場は熱気に包まれ、出場チームが優勝を目指し凌ぎを削ります。

またベースボール5普及に向け、元プロ野球選手だった斎藤佑樹氏がスーパーバイザーに就任。当日の大会にも参加されており、賑わいをみせていました。

斎藤佑樹氏は、自身のユーチューブチャンネルで、ベースボール5専用の球場を作る様子を公開するなど普及に向け精力的に活動しています。

男女関係なく対等に向き合うベースボール5

会場にはDJブースもあり、試合を盛り上げる

個人的にベースボール5を観戦した率直な感想は、子供の頃にやっていた「手打ち野球」を思い出しました。ただ、そのルールは異なり懐かしくもあり新鮮さを感じたことを覚えています。

また試合を盛り上げる音楽や実況もあり、初心者でも楽しむことができます。プレー中は男女関係なくスピード感とダイナミックなプレーが醍醐味です。

女性も活躍できるベースボール5

バッテリーは存在しないため、始まりはバッターから

男性は力の関係もありダイナミックなプレーが魅力

バッティングは手のひら、もしくは拳で打つ

試合中は野球同様に戦略を立て直す場面や、イニング後ではチームのプレーを讃える場面も見られます。

各チームには1セットにつき30秒のタイムアウトが1回与えられ、戦略的な再編成や調整が可能

イニング後にチームメイト同士でプレーを讃えあう様子

今後はルールの改定や女性に対してハードルをいかに下げられるかが普及の鍵

真剣が故に衝突プレーも

ベースボール5のルールは、国際大会の開催ごとに毎年改定されているようです。

狭いフィールド、男女混合ということもあり、接触プレーやボールが頭部に当たるなど安全性において見直しが必要な部分もちらほら。

2024年9月1日には、安全性と試合の流れの向上を目的としたルール改定が施行されました。

また野球やソフトボールに比べ参加障壁が低いことから、女性にとっても始めやすいスポーツですが、現在では深刻な女子不足が実情のようです。

これには、まだまだベースボール5の認知度が低いなどの課題が残り、今後もルール改定など女性目線でのアプローチを行うことが求められるのではないでしょうか。

道半ばな印象もありますが、新たなスポーツとして動き出したベースボール5の今後の動向に期待がかかります。

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Kazuya Nakagawa