会社として4期目に入り、あっという間に1ヶ月が過ぎました。
ありがたいことに日々多くの案件に追われるようになってきました。
一方で、僕らが大切にしてきた「思考の時間」や「問いを立てる余白」が少しずつ薄れているのではないかという感覚もありました。
この1ヶ月は、呼吸の整え直が要求されているような、そんな期間だと感じています。
主な変化
「毎日発信」から「思考の熟成」へ
これまで続けてきたリトルプレスの毎日更新を、今期から週3回の更新に切り替えました。
これは単なるペースの調整ではなく「言葉との向き合い方」をもう一度見直すための判断でした。
毎日更新を続けていると、いつの間にか「出すこと」自体が目的になってしまうと感じます。もちろん継続は力です。しかし、リズムが整いすぎると、思考が浅くなっていく危険もあります。
僕らが発信したいのは単なる「情報」ではなく、「観点」であり「文脈」であり「問い」です。
ならば、更新頻度を減らしてでも、1本の文章の濃度を上げたほうがいい。
メンバーからも「数より質に舵を切ろう」という声が上がりました。
結果として、文章に使える時間が増え、取材や引用、構成の深掘りをするためにどうすればいいかという議論につながりました。
読んでくださる人の時間を奪うのではなく、整えるような文章を目指してこれからも書き進めたいものです。
「思考を耕すための静かな日」を持つ
リトルプレスの発信方針を見直す中で、大きなテーマとして浮かび上がったのが「インプット不足」です。
まるでインプットが「貧血」のような状態でした。
僕らのアウトプットの質は「どれだけたくさんの情報を扱うか」ではなく、どんな「体験を吸収しているか」で決まります。
文化に触れること、偶然に出会うこと、そしてそれらを思索する時間。これらが枯渇していたのです。
直近でありがたいことに業務は増えましたが、その忙しさの中で「考える前に手が動く」状態が日常になっていました。
しかし思考を外へ出すには、まず内側を満たす必要があります。その当たり前の原理を、あらためて実感しました。
そこで今期から、会社として「静かな日」を設けることにしました。
特定の曜日を「インプットの日」とし、本を読む、美術館に行く、映画を観る、音楽を聴く、写真を撮りに出かけるなど、つまり、自分の感性を耕すためだけの時間を持つようにしています。
この時間は、直接的な成果にはつながらないかもしれません。
しかし良い編集やデザインは、日常の「見えない経験の蓄積」からしか生まれません。
見たもの、聴いたもの、感じたものが、ふと形になって現れるような、そんなゆるやかな循環を取り戻したいのです。
もちろん、業務状況によってはこの時間がどうしても作れない日もあるかもしれません。
それでも、この風土は守りたいと思っています。私たちの仕事の本質は「文化を扱うこと」であり、文化は闇雲な忙しさの中からは決して育たないと考えているからです。
改善点すべき点
日々のご相談、案件が増え、各メンバーがそれぞれの動きを求められるようになってきました。
それは組織が成長している証でもありますが、同時に少しずつ「個の分断」に繋がってしまわないかという怖さも感じています。
いまの私たちは、それぞれが点として懸命に動いているものの、点が線になり、面になるための「呼吸」が少し乱れているような瞬間もあります。
個々の努力は見えているのに、全体のリズムがまだ整いきれていない状態です。
本来、編集という営みは「関係をつくること」そのものです。情報と情報をつなぐように、人と人、視点と視点をつないでいくという視点が機能していないと、どれだけ優れた仕事をしても「全体の温度」が伝わりにくくなってしまうと思うのです。
原因は単純な忙しさかもしれません。
けれど、それ以上に「共有する時間」が減ったことが大きいように思います。
日々のSlackやNotionのやり取りでは補えない、温度の共有のようなもの。その欠如が、チーム全体の呼吸を浅くしてしまっているような感覚。
だからこそ、これからはもう一度「一緒に考える時間」を意識的に取り戻したいと思っています。
効率的に進めるだけでなく、立ち止まって話す、迷いを言葉にする、そして、誰かの思考を通じて自分の視点を広げることを大事にしたいのです。
チームとは、タスクを分担するための集団ではなく、互いの思考を媒介に世界の見方を共有していく場でもあると思います。
2025年10月の動き
4期目の最初の月を経て、いま感じているのは「走る前に、整えること」の大切さです。
新しい案件、新しい相談、新しい挑戦など変化の波が続く中で、まず立ち止まって、全員が同じ地図を見られる状態をつくる。
それがこの10月にやるべき仕事だと考えています。
日々のタスクはどれも重要ですが、その積み重ねが「どこに向かう線なのか」を確認しないまま動いてしまうと、いくら努力しても組織としての推進力は生まれません。
だからこそ、今月は意識的に「見直す」「共有する」「整える」を繰り返していこうと考えています。
10月は、加速の前の整流の月。スピードよりも、正しいリズムを取り戻すための動きに意識を置き、進んでいこうと思います。