最近色々なイベントに顔を出すこともあり、学生さんと話すことが多くなりました。
起業を志す学生さんも多く、色々な質問を頂戴します。
その中で最も多いのが「起業して何が大変でしたか?」というもの。
大変なことはいっぱいあるんですが、「税金と、社会保険と、資金繰りだったよ」と答えると、かなりの確率で「え、そこなんですか?」的な顔をされます。
税金と、社会保険と、資金繰りに悩まされていない経営者の方もたくさんいると思うのですが、僕は悩まされていた(いる)タイプです。
起業というと、新しいサービスをつくることや資金調達、仲間との挑戦など、キラキラした華やかな情報に目が行きがちな気がします。しかし実際には、もっと地味で、現実的で、向き合わないといけないことがたくさんあったりします。
今回は、これから起業してみたい方に向けて、僕自身の経験から「このあたりは先に知っておいたほうがいいかもしれないな…」と思うことを10個まとめてみます。
「これから起業というものをしてみたいけど、どんなものなんかなー」という方に向けて書いてみますので、人によっては「そんな当たり前のこと知ってるよ」ってなると思いますがご容赦を。
ちゃんと知って、ちゃんと準備して、それでも挑戦する人が増えたらいいなと思っています。
各種税金と社会保険は、必ず払おう
なんかもうこれだけ伝えられればいいような気すらしていますが、会社をやっていると、想像以上にいろいろな税金や社会保険料の通知が届きます。
これでもかと届くんです。
なんのために必死に売り上げを上げたのだろうか…というレベルで届きます。
会社員をしていたり学生さんだったりするとどうしてもこの辺りは手触り感がない部分かもしれませんが、これでもかと届きます。
「学生だから今回は免除してあげようね」みたいな容赦は一切ありません。
そしていちばんよくないのが放置することです。
「今お金があんまりないから今度払おうかな!」と、放置してしまうと最悪差押になってしまうこともあります(弊社はまだなんとか大丈夫です)。
社保倒産なる言葉もあるぐらいです。
まじでこの辺は絶対払いましょう。
もし「どうしても今は払えない…。どうしよう…。」という場合は税務署や年金事務所など、お手紙に書いてある所定の場所に絶対に相談しに行きましょう。
「今は大変だと思うから分割で納付しよう」など相談に乗ってくれます。少なくとも、いきなり怒られるようなことはないはずです。
大事なのは、払う意思をちゃんと示すことです。辛くなったら逃げずに相談しましょう。
資金繰り(キャッシュ)はとにかく重要
これはもう言うまでもありませんが、会社はキャッシュがなくなるととても辛いことになってしまいます。
今の会社ではありませんが、私は最初に会社の立ち上げを行ったのが2017年。それから今日まで何度もうダメかと思ったことか…。キャッシュが手元から離れていってしまった時のあの気持ちを思い出すだけですごい気持ちになります。
給与、外注費、ツール代、家賃、税金、社会保険料などなど、会社を動かしているだけで、お金はどんどん出ていきます。よく「半年分くらいの運転資金は持っておいたほうがいい」と言われますが、立ち上げの会社でそれを簡単に用意できるとは限りません。
仮に用意できたとしても、翌月の売上が立たなかったり、大きな支払いが重なったり、税金で一気に持っていかれたりすることもあります。
キャッシュは大事です。
キャッシュがあれば、とりあえず会社は死にません。
逆に言えば、どれだけいいサービスをつくっていても、どれだけいい仲間がいても、手元のお金がなくなると会社はかなり危うくなります。
まずは死なないこと。本当に、これはものすごく大事だと思います。
株の比率は、慎重に考えて
株式会社の場合の話ですが、会社は基本的に株主のものです。
たとえ自分が会社を立ち上げたとしても、株の多くを他の人が持っていると、自分だけでは大事なことを決められなくなります。
よく、友人と50%ずつ株を持って起業したり、投資家に出資してもらう代わりに大きな比率の株を渡したりする話を聞きます。もちろん、それ自体が必ず悪いわけではないと思いますが、ただ、株の比率はあとから簡単に戻せるものではありません。
最初は仲が良くても、事業の方針やお金の使い方、働き方をめぐって意見が割れることもあります。
幸い、僕自身はこの手のトラブルに巻き込まれずにこられました。
ただ、実際にかなり大変な状況になっている人を何度か見たことがあります。だからこそ、勢いや仲の良さだけで決めないほうがいいと思い書いてみました。
役員ばかりで会社を作るのは慎重に
自分がかつて6人全員取締役という会社の立ち上げに参加した時の話です。
その時はみんな本業がある中での兼務でした。そして全員が取締役だったので、指揮系統がよくわからなくなってしまいました。
誰が何を決めるの?誰がどこまで責任を持つの?誰がどれくらいコミットしているの?などがかなり不透明な状態だったんですね。
色々なことがふんわり進んでしまった結果、その会社は空中分解。誰もいい思いはしませんでしたし、仲も悪くなってしまいました。
こんなアホな経験するのは僕だけかなと思っていたんですが、意外と周りにもちらほらいたりします。
誰かと会社を作ること自体は悪いことではありませんし、むしろ、一緒に進められる仲間がいるのはとても心強いことです。ただし責任範囲はしっかり決めておきましょう。コミットメントできない人を取締役レベルに入れてしまうと大変なことになる可能性があります。
特に立ち上げの時期は、誰が何をやるのか、どこまでコミットできるのかをかなり明確にしておいたほうがいいですね。仲がいいから一緒にやる、勢いがあるから全員役員にする、という決め方は慎重になったほうがいいと思います。
会社経営は泥臭く
起業をどこかキラキラしたものとして見ている人はかなり多いように思います。
僕自身もそういう時期がありました。
成功している経営者っぽい場所に行って、経営者っぽいお酒を飲んで、なんとなく自分もそれっぽくなった気になっていたことがあります。恥ずかしいですね。お金が無駄になっただけで全く意味はありませんでした。
そのような場所にはそのような人しかいないと学べたのは良い経験だったかもしれませんが。
まあ、そういう場から生まれる出会いもあるとは思います。
しかししっかり売上を作ったり、会社を続けたりするためには、それだけではどうにもなりません。
実際には、うまくいっているように見える人たちも裏ではかなり泥臭いことをしていたりします。
いろいろなところに頭を下げたり、とにかく人に会いに行ったり、お金を借りるために銀行を回ったり、何度も銀行に提案して断られたり。
それでも、全然うまくいかないこともあります。
そういう大変さを表に出していないだけだったりすることがたくさんあります。涼しい顔をしている人ほど、見えないところでかなり踏ん張っていることも多いように思えます。
起業は面白いものではありますが、時に信じられないほどの負荷がかかるものでもあります。
華やかに見える部分だけではなく、相当タフな側面もあるということは知っておいてもらいたいです。
数字に弱くならないようにしよう
経営をしていると、いろいろな数字が出てきます。
試しに気になる会社の決算書などをみてみるといいと思うのですが、慣れていないと何が何だかわかりません。
僕も途中まで会計的な数字がまったくわかっておりませんで、「PL/BSってなんだ?」という状態でございました。情けない限りです。
その時は行き当たりばったりの経営判断しかできず、思いつきがたまたま当たることはあっても、それは運でしかなく、再現性がありません。
経営というか、ギャンブルに近い状態だったと思います。
数字がわからないと会社のどこに問題があるのかわからないんです。特定部署の売上が足りないのか、利益率が悪いのか、固定費が重いのか、経費を使い過ぎているのかなどなど、そういったことが見えないままだと、どうしても場当たり的な経営になってしまいます。
数字がわからないとどこにボトルネックがあるのかわからず、上手に改善ができないため、結果としてサービスが拡大できません。
「数字は詳しい人に任せているから、自分は見なくていいんだ」とは考えないほうがいいと思います。
最終的に責任を持つのは自分なので。
会社を続けていくためにも、数字から逃げないことはかなり大事だと思います。
自分が理解していない投資話に安易に飛びつかない
これは本当に気をつけたほうがいいと思っています。
起業して会社をやっていると、いろいろなお金の話が入ってくることがあります。
僕の場合、特に多かったのは保険でした。
保険そのものが悪いと言いたいわけではありませんよ。僕はよく理解しないまま言われるがままに入ってしまい、あとから見返すと「これはかなり微妙だったな」と思う保険に入っていたことがあります。
アホですね。大反省しています。
「これに入れば、将来的にこれくらいお金が増えます」「節税にもなります」「今のうちに入っておいたほうがいいですよ」みたいな話は、会社をやっていると増える時期があるかもしれません。お金に不安がある時ほど、そういう話が魅力的に見えてしまうこともあります。
しかし、自分が仕組みを理解できていないものに安易にお金を入れないほうがいいです。目先のメリットだけを見てしまうと、結局シンプルにお金を無駄にしてしまう可能性があります。僕のように。
少しでも「なんだかよくわからないな…」と思ったら、その場で決めずに、周りの詳しい人に相談したり、自分でもちゃんと調べたりしたほうがいいです。
お金に関わることほど、ちゃんと理解してから決めたほうがいいです。
採用は仲の良さではなく、会社との相性で考えて
ただ仲がいい人や、付き合いの長い人だからという理由で採用すると、合わなかった時にかなり大変なことになります。
僕自身、採用がうまくいかずすごくたくさんのキャッシュを失ってしまったことがあります。カルチャーフィットが上手くいかず、先輩社員にも苦しい思いをさせてしまいました。ただそ、その時採用した人たちに責任はなく、僕がその人たちを幸せにできなかっただけだという点だけは強調させてください。
立ち上げ当初は、自分の会社がどんな会社なのか、自分たちでもまだよくわかっていないことが多いと思いますが、だからこそ採用はかなり慎重に。
人にはそれぞれ個性がありますし、その個性が強いからこそ大きな力を発揮することもあります。が、一方で、ある組織ではうまく機能する個性が、別の組織では混乱を生んでしまうこともあります。それはその人が悪いというより、その人と会社の相性が合っていないということだと思います。
前提として、「個」が強くなければ強いチームは作れないと思っています。ただ、その強い「個」と「個」が、ちゃんと相乗効果を生めるのかどうか、ここを見極めるのはなかなかに難しいんですが…。
AIに思考のすべてを委ねず、自分でも調べに行こう
ある大きめの大学の方と話していた時に「最近ビジコンをやると、8割くらいがAIに聞いたものをそのまま出してくるんだよねえ」という話をされていました。
また、ある若い起業家の方と話していた時のことですが、「AIに補助金について聞いたら、使えるものはこれとこれだけだと書いてありました」と言われたことがありました。実際には、その方がやりたいことを支援してくれる補助金はほかにもかなりたくさんあったのですが、然るべき場所に聞きに行っていなかったんですね。
AIはとても便利ですし、使わない手はないと思います。しかしAIから出てきたものだけで判断してしまうのは少し危ないとも感じています。
ちょっと大変ではありますが、自分で調べて、自分で考えて、必要であれば人に聞きに行くということはやっぱり大事だと思うんです。
その中でしか出会えない情報や、現場でしかわからない感覚もたくさんありますし。
AIはどんどん使えばいいと思います。便利なものに頼りつつも、思考そのものまで任せっきりにしない方がいいかもしれません。
これは自戒も込めて、かなり大事だと思っています。
自分を律する力を持とう
毎日走る、1時間は本を読む、朝早く起きる、決めたタスクをやり切る、納期を守るなどなど…、なんでもいいんですがこういった「その気になればサボれたり、先延ばしにできたりすること」は、実はかなりたくさんあります。
会社をやっていると考えることが多く、目の前のことに追われているうちに、つい「これは明日でいいか!」となってしまうことがあります。きっと僕だけではないはず。
そうやって少しずつ先延ばしにしていると、自分に負ける癖がついてしまうと思っています。
克己心はとにかく大切です。
精神論のようですが、欲望に流されず、やるべきことをやれるかどうかはかなり大事です。
「ひたすら禁欲的に生きたほうがいい」という話ではなく、「やるべきことがあるのに、自分の弱さや欲望に流されてしまうことに気をつけたほうがいい」というお話です。
「ちょっと頑張ればできること」は、ちょっと頑張ってやりましょう。その小さな積み重ねが、あとからかなり大きな差になります。取り返しがつかないくらい本当に大きな差になってしまいます。
一時の欲に負けてチャンスを逃してしまった人たちを、僕は何度も何度も見てきました。
立派なビジネスを作りたいなら、まず自分自身も少しずつ立派になっていかないといけないのだと思います。僕は全然できていないので、頑張ります。
最後に:正しく進めばきっと大丈夫
今回はこれから起業してみたい方に向けて書いたので、内容としてはかなり基本的なものだったと思います。
ただ、ここに書いたようなことが、実際に会社をやってみると意外と難しかったりします。恥ずかしながら、僕たちもまだまだちゃんとできているとは言えません。
会社をやっていると本当にいろいろなことが起きます。想像していなかったこと(良い事も悪い事も)も起きますし、「そんなことあるの?」と思うような嘘みたいなことも普通に起きます。
それでも、折れず、くさらず、やるべきことから逃げず、周りの人を大切にして、少しずつでも正しく進んでいればきっと大丈夫だと思っています。
まず自分を大切にしてくれる人たちを大切にしてください。そしてお客様や仲間に対して、ちゃんと誠実でいてください。
そして、自分たちが本当にいいと思えるサービスを作っていってもらいたいです。
起業は大変なことも多いですが、その分、自分の手で何かを作っていける面白さもあります。これから起業を考えている方には、華やかな部分だけではなく、こうしたリアルな部分も知ったうえで、それでも前に進んでもらえたら嬉しいです。